【名探偵コナン】存在証明#4【降谷零】 (ページ19)

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◇

「最近はどうだ？配達員さん」

「どうと言うか、こうと言うか」

　と、ぼやきながら味噌汁を啜る。
　約二週間ぶりほどだろうか。少し遅い夕食。珍しく、やっと食事を共にすることができた。確かに家には帰ってきているものの、全く生活リズムは噛み合わない。朝に帰ってきて無言でベッドに倒れ込む日もあれば、夜中の急な呼び出しに飛び出す時もあった。こうやって食事を共にできるだけで感涙ものである。

「変な配達物ばっかで参ってます、給料弾んでるからいいんですけど」

　バイトの日はひたすら自転車で近辺を回るだけ、そしてそうじゃない日は───

「───脱却してえなあ、ニート……」

「何か言ったか？」

「……何も……」

　気付かれないように小さくため息をつく。
　なんだか、たまにこの人が怖い。
　いや怖いのは元々なのだが、私のことを心配しすぎているような気がする。最近調子は悪くないし、以前のように突然倒れてしまうことも全くない。絶好調と言っても申し分ない。調子が良くなったらそれでいいんじゃないか？と思うが、どうもこの人は心配性のきらいがある気がする。

「くれぐれも無理はしないようにな」

「してませんよ、ぜーんぜん」

　どこかの誰かと比べれば、と心の中で付け加えた。

◇

「って言うくせして、自分はすぐ出ていくもんなあ！」

　むしゃくしゃして、ソファの枕代わりのクッションをぼすぼすとサンドバックにする。たまに帰ってきたと思ったらこんなものを買ってくるものだから、少しくらいムカついたっていいだろう。

　同居人と全く会わないというのは、やっぱりどうにも気持ちが悪い。もっと休んで欲しいというのは私のエゴだが、……だったら───

「……だったらこれはなんなんだよ……」

　dis、dis、dis。ヒステリックにも程がある。ムカムカして、イヤホンで耳を塞いだ。大音量で流れる歪んだギター。次々と流れるどうでもいい動画を上へ上へと追いやっていく。

　どうにも、人間は簡単に変われるものじゃない。
　こういう日はどうしたって考え事は尽きないし、心の中の独り言も止まらないのだ。鬱だってなんだって人ってそういうものじゃないだろうか。他の人のことはわからないけど。

「あ゛ーもぅ……」

　ガシガシと頭を掻く。どうしたって私はこんなにも苛立っているのだろうか。いつからだ、とイヤホンから流れる音楽をBGMに記憶を辿る。

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