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◇
「くあ〜ぁ……」
退屈なあくびをこぼす。
あれからしばらく……二週間くらいは、多分経った。
結論から言おう。
降谷さん全然帰ってこない。
否、分かっているのだ。むしろ家にいるほうがレアじゃねっていう感じ。寝て、ご飯を食べている形跡は確かにあるのだ。でも全然会えない。別に付き合ってるとかそういう感情じゃなくて、同居人と顔を合わせないというのは、なんとも───
はあ、と大きなため息をついた。今日も今日とて作り置きを拵える日々。帰ってきた時はちゃんとご飯食べてるのは分かってるし、メッセージ(という名の手書きのやりとり)で一応安全も確認できてる。それでも───
「ぁあもう、なんでこんなムカつくかなぁ!」
誰もいないのをいいことに、大きな声と共に卵焼きを勢いよくひっくり返した。
◇
そんな日々を送っている中。
かたん。ポストの中のチラシを確認する。寿司、ピザ、水道、それから───
「……ん?」
短期アルバイトの、募集。
どんなもんよとソファに寝転びながら詳細に目を通す。
要するにポスティングの短期アルバイト・パートの募集、だ。チラシや郵便物をポストにお届けするだけの簡単なお仕事。歩合制とはいえ、小さく書かれている条件に私は引き寄せられた。
「学歴性別年齢不問、身分証明書のみでOK───!?」
がば、と体を起き上がらせる。自転車で頑張れば時給千円くらいはいくようだ。しかも自転車は社用だからわざわざ買う必要もなし、わなわなと腕を震わせる。
これしかない、と拳を握りしめる。自転車圏内のポスティングくらいだったら降谷さんもOK出してくれるはず。これだ。これしかない。なんだか急な展開感は否めないが、学歴のない社会不適合者ニートから脱出できるはず───!
◇
「ダメだ」
「えっ」
少々遅くなったが、久々 に夕食を共にできた。そして話をする絶好のチャンス。今しかないと仕舞い込んでいた勧誘のチラシを手に、プレゼンした直後。思っていたよりもキツい返答が返ってきた。
「君、自分がどういう状況が分かってないだろう」
「わ、分かってます! よ! このまま降谷さんのお世話になり続けるわけにもいきません、ニート脱却の絶好のチャンス───」
ぽか、と拳が頭に降ってきた。
「そういうところだぞ」
……どうしてだろうか……。
FILE.14 ページ14
「くあ〜ぁ……」
退屈なあくびをこぼす。
あれからしばらく……二週間くらいは、多分経った。
結論から言おう。
降谷さん全然帰ってこない。
否、分かっているのだ。むしろ家にいるほうがレアじゃねっていう感じ。寝て、ご飯を食べている形跡は確かにあるのだ。でも全然会えない。別に付き合ってるとかそういう感情じゃなくて、同居人と顔を合わせないというのは、なんとも───
はあ、と大きなため息をついた。今日も今日とて作り置きを拵える日々。帰ってきた時はちゃんとご飯食べてるのは分かってるし、メッセージ(という名の手書きのやりとり)で一応安全も確認できてる。それでも───
「ぁあもう、なんでこんなムカつくかなぁ!」
誰もいないのをいいことに、大きな声と共に卵焼きを勢いよくひっくり返した。
そんな日々を送っている中。
かたん。ポストの中のチラシを確認する。寿司、ピザ、水道、それから───
「……ん?」
短期アルバイトの、募集。
どんなもんよとソファに寝転びながら詳細に目を通す。
要するにポスティングの短期アルバイト・パートの募集、だ。チラシや郵便物をポストにお届けするだけの簡単なお仕事。歩合制とはいえ、小さく書かれている条件に私は引き寄せられた。
「学歴性別年齢不問、身分証明書のみでOK───!?」
がば、と体を起き上がらせる。自転車で頑張れば時給千円くらいはいくようだ。しかも自転車は社用だからわざわざ買う必要もなし、わなわなと腕を震わせる。
これしかない、と拳を握りしめる。自転車圏内のポスティングくらいだったら降谷さんもOK出してくれるはず。これだ。これしかない。なんだか急な展開感は否めないが、学歴のない社会不適合者ニートから脱出できるはず───!
「ダメだ」
「えっ」
少々遅くなったが、久々 に夕食を共にできた。そして話をする絶好のチャンス。今しかないと仕舞い込んでいた勧誘のチラシを手に、プレゼンした直後。思っていたよりもキツい返答が返ってきた。
「君、自分がどういう状況が分かってないだろう」
「わ、分かってます! よ! このまま降谷さんのお世話になり続けるわけにもいきません、ニート脱却の絶好のチャンス───」
ぽか、と拳が頭に降ってきた。
「そういうところだぞ」
……どうしてだろうか……。
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作者名:名無しさん | 作成日時:2023年3月6日 21時