検索窓
今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:10,635 hit

FILE.14 ページ14



「くあ〜ぁ……」

 退屈なあくびをこぼす。
 あれからしばらく……二週間くらいは、多分経った。

 結論から言おう。
 降谷さん全然帰ってこない。

 否、分かっているのだ。むしろ家にいるほうがレアじゃねっていう感じ。寝て、ご飯を食べている形跡は確かにあるのだ。でも全然会えない。別に付き合ってるとかそういう感情じゃなくて、同居人と顔を合わせないというのは、なんとも───

 はあ、と大きなため息をついた。今日も今日とて作り置きを拵える日々。帰ってきた時はちゃんとご飯食べてるのは分かってるし、メッセージ(という名の手書きのやりとり)で一応安全も確認できてる。それでも───

「ぁあもう、なんでこんなムカつくかなぁ!」

 誰もいないのをいいことに、大きな声と共に卵焼きを勢いよくひっくり返した。





 そんな日々を送っている中。
 かたん。ポストの中のチラシを確認する。寿司、ピザ、水道、それから───

「……ん?」

 短期アルバイトの、募集。
 どんなもんよとソファに寝転びながら詳細に目を通す。

 要するにポスティングの短期アルバイト・パートの募集、だ。チラシや郵便物をポストにお届けするだけの簡単なお仕事。歩合制とはいえ、小さく書かれている条件に私は引き寄せられた。

「学歴性別年齢不問、身分証明書のみでOK───!?」

 がば、と体を起き上がらせる。自転車で頑張れば時給千円くらいはいくようだ。しかも自転車は社用だからわざわざ買う必要もなし、わなわなと腕を震わせる。

 これしかない、と拳を握りしめる。自転車圏内のポスティングくらいだったら降谷さんもOK出してくれるはず。これだ。これしかない。なんだか急な展開感は否めないが、学歴のない社会不適合者ニートから脱出できるはず───!





「ダメだ」

「えっ」

 少々遅くなったが、久々 に夕食を共にできた。そして話をする絶好のチャンス。今しかないと仕舞い込んでいた勧誘のチラシを手に、プレゼンした直後。思っていたよりもキツい返答が返ってきた。

「君、自分がどういう状況が分かってないだろう」

「わ、分かってます! よ! このまま降谷さんのお世話になり続けるわけにもいきません、ニート脱却の絶好のチャンス───」

 ぽか、と拳が頭に降ってきた。

「そういうところだぞ」

 ……どうしてだろうか……。

FILE.15→←FILE.13



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (36 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
485人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:名無しさん | 作成日時:2023年3月6日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。