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もちもちの団子に夢中になっていると───降谷さんが団子に口もつけないまま、じっと私を見ているのに気付いた。慌てて団子を飲み込んで、あわあわと手を振る。哀れな……と自分のことながら思ってしまった。
「も、もしかしてなんか顔についてますか！？ あ、桜かなっ」
頭や肩をはらうものの、私の体にはどこにも異変はない。はずだ。それかめちゃくちゃ変な顔してただろうか。
あたふたと変な動きをする私を見て、ついに降谷さんはぷっと小さく噴き出した。それから小さく笑い始める。穴があったら入りたい。多分今の私の顔は茹で蛸より赤いと思う。
「……あの……」
「いや、ごめん。相変わらず美味しそうに食べるなと思って」
それから、自分も団子を食べ始めた。
あ〜なんだそんなことか。……そんなわけがあるか。もう茹で蛸を通り越して、恥ずかしさで身体中が蒸発しそうだった。ぷすぷすと音を立てて煙を上げている気がする。……自分ではそんなつもりなかったのだが、もうこれからはずっと無表情でもの食うか、と桜に誓った。
「……そんな変な顔してたでしょうか」
「いや、変っていうより、かわい───」
そこまで言いかけてはっと何かに気付いたように、なんでもないと付け足した。今この人かわいいって言おうとしたな。悪いが私は鈍感系主人公じゃない。そこまで言いかければわかるだろ馬鹿野郎と心の中で悪態をつく。
……かわいい、か。まあガキがうまそうにもの食ってたらかわいいよなあ、なんて。短期でやっていた学童のバイトを思い出す。よし、脈なし。安心した。泣いてない。
団子も食べ終え、ぬるくなったお茶を飲み干して空を見上げる。……泣いてないったら泣いてない。めっちゃいい天気だし。
水色の空に桜がよく映える。なんとなく携帯で写真を撮った。ああそういえば、この貰った端末で写真を撮るのは、初めてだ。それがなんだかちょっと嬉しくて、撮れた写真を見返してみた。
ほんとに、良い天気だ。
隣に座る降谷さんも、お茶を飲んで小さく息をついてから、桜を見上げた。
───ああ、また、この表情だ。
時たま、この人はこんな顔をする。
そんな時、私は決まってどうすればいいのかわからなくなる。
近くに、隣にいるのが私でいいのだろうか。こういう時は一人にするべきではないのだろうか。恐ろしいほどに、そんな感情に襲われてしまうのだ。
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作者名：名無しさん | 作成日時：2023年3月6日 21時
