駅員さん ページ16
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朝の通勤ラッシュの時間帯、電車の扉が開く時、それは地獄の釜が開く時。
どれだけ乗車率が高かろうが、この電車に乗れなければ私は困る。
そんな私を助けてくれるのが、私を電車に無理に押し込んでくれる駅員さんだ。
そうした仕事をする人は、押し屋と呼ばれるアルバイトが多いそうなんだけど、彼はそうではなかった。
名札を見たところ、正社員。
名を「高木」さんという。
見た目はチャラく、背は高い。足が長くて制服がこれでもかと似合っている。
妙に色気のある人で、彼に押してもらえるのを楽しみに、私はあの地獄の人混みの中、いつもギリに乗り込むようあの手この手を尽くしてる。
しかし最近、そんな私にライバルが現れた。
ヒールを履いた私とそう身長差のないスーツ姿のサラリーマンらしき人。
なにより目を引くのはその美貌だ。
形の良い高い鼻、スベスベの白い肌、濃いまつ毛が縁取る大きな目は黒目がちでキラキラと潤んでる。
春、おそらく新卒、明らかにこのラッシュに慣れておらず、この生死をかけた戦いに軽く怯えた表情をみせる彼は、女の私から見ても可憐だった。
でも彼が現れてからというもの、高木さんは美貌の彼の専属押し屋になってしまった。
「押しますよ。」
高木さんは声も超イケメンだった。
囁くようにそう言うと、美貌の彼の両肩をグッと押した。
「んっ……」
と美貌の彼が苦しげな声を上げる。
乗り切らないのか、高木さんは今度は全身を使って押し込みながら、艶かしい吐息を美貌の彼の耳元に漏らした。
妙な雰囲気が漂う中、私はその真横で寂しく自力で必死に電車に身体を押し込んだ。
日に日に、彼らの様子は妖しさを増していく。
「痛かったら言ってください。やめますから。」
「……大丈夫です。最後まで…入れてください。」
ちょっとなんなの、この会話?
毎朝、この時間帯にうまく最後に乗り込める場所取りをする力量があるのなら、最初からなんでもっと電車の内側に入るポジションを確保しないのか?
そういう私も、毎朝、彼らの隣を必死にポジショニングしているのだが。
怖いもの見たさなのか、彼らがどこまで行くのか見届けたいのか、いや、それ以前に彼らの恋の列車は発車しているのか、いないのか?
せっかく見つけた朝の楽しみ、いつの間にやら方向がちょっとズレてしまったけれども、見逃すワケにはいかないのだ。
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はなこ(プロフ) - しろくまさん» しろくまさぁんっ!お久しぶりです!ええ、やぶひかなんて、こないだのWU誌はマネにしたら「なに?楽屋の再現?仕事じゃないっスね」てとこでしょうね。いや、でもあれは堪らんかったぁ… (2019年9月19日 19時) (レス) id: be0c1ceb57 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - マネさんの成長ぶり最高ですね〜。こうした優しき人々の支えがあってこそのお二人…ん?ってことは、我が推しcpもお世話になっているってことかしら。あざーすっ。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - Yokoさん» Yokoさん、お久しぶりです!すっかり消えてました、私!笑 マネは世間のズレに気づいて上手いこと覆い隠してくれる人でないと。うちらみたいに萌え転がってたらアウトでしょうねぇ。羨ましいなぁ。 (2019年9月12日 23時) (レス) id: be0c1ceb57 (このIDを非表示/違反報告)
Yoko(プロフ) - マネージャーさんが静かにゆっくりと常人の感覚じゃなくなっていく様が、まさにファンが腐ってゆく過程に重なってもう、素晴らしい、の一言であります!!いーなーマネージャー。ゆとやまちゅっちゅのマジもんを間近でみられるんですもんねえ…。羨ましいなあ。 (2019年9月12日 21時) (レス) id: 1ec0dcf065 (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - minasa105さん» minasa105さん!見ました見ました!あまりのタイムリーさにマジで読んだか?と疑いました!(←ない)ymさんのあの顔…全国放送忘れてますよね…ここんとこの溢れかえりダダ漏れ感。何も知らないハズの妹から「気づいちゃった」と謎のLineがくる始末…もっとやって。 (2019年7月14日 8時) (レス) id: be0c1ceb57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はなこ | 作成日時:2018年9月21日 9時