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真っ暗なのか、真っ青なのか、真っ赤なのか、わからない。
ここは外へ転送される道なのか?と呑気に考えていたらぺしぺしと叩かれているような気がして、そこで初めて自分は目を閉じているのだと分かった。べっとりとした泥のようなものから這い上がるように目を覚ます。
「@?>#&!」
目の前にはカラフルな球体。
「ベベ……私、寝てたのか」
目を擦りながら自分の頬を叩いていたぬいぐるみのようなものを抱き上げ、頭を撫でる。ベベは文句があるようで、まだ何か声を発している。
正直何を言っているのか分からないけど、言っている意味、伝えたいことはなんとなくわかる。
「そうだな、迷宮にいる間ずっとぬいぐるみのフリしてたもんな、ごめんって、ずっと腰布に掴まってたっていうか、袖結んでたもんな……って叩くなよ、ごめんって!」
端から見れば動く謎のぬいぐるみと喋っている変人にしか見えないだろうけど、幸いここには私とベベしかいない。
あいつらと一緒じゃなくて良かった、と安堵の溜め息をついて、ナップサックのような袋からチーズ菓子を出してベベの口に放り入れる。うん、満足そうに食べている。これで良し。
安心して気を抜いた瞬間、ぐらりと視界が歪んだ。
透明な床に手をつく。前まではここまで酷くなかったのに、と左中指にはめてある銀の指輪を睨む。最近はふと気を抜くとすぐに気絶しそうになる。
眉間に皺が寄っていたのか、ベベが顔を覗き込んでいた。大丈夫だよ、と言ってもう一度頭を撫でた。
泣きそうになるのを堪えて、瞼を降ろした。
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作者名:名無しさん | 作成日時:2017年12月30日 21時