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「これで僕らの冒険も……おしまい、だね」
迷宮から出たら聞いてみるか、と考えていると、アラジンは少し寂しそうな顔で言う。俺も反復して、おしまいか、と口に出した。
アリのバケモンに襲われた時を思い出す。
金銀財宝を目の当たりにした時の高揚感を思い出す。
領主達との戦いで、絶対絶命のときのアラジンの横顔を思い出す。
「なあ、アラジンよー……
世話んなったな!色々。俺、お前と琥珀に会わなかったら『迷宮攻略』できなかった気がするよ」
この場にいない
「それどころか、攻略に来すらしなかったかもしれない。俺、いつもそうなんだよなー。普段は平気なんだけど、いざとなると、足がすくむっつーか、全然動けないっつーか。
まぁ、お前と琥珀にもいつか話すけど、昔、それでひでー失敗したことがあってさ。……まぁ、単にヒキョー者……っつーか……だからさ!今回お前の力で────」
「ううん、そんなことないよ」
迷宮攻略も、と言おうとした所でアラジンに遮られた。
アラジンはすっくと立って、こちらを真っすぐな瞳で見つめてくる。
「きみは勇気ある人さ」
口を開けてぽかんとする俺を置いて、アラジンは話を続ける。
「はじめて会った日を覚えているかい?あの時きみは、おじさんに散々馬鹿にされて、自分の夢や名誉のために怒ることはなかったね。
けれど、他の人の命の価値が馬鹿にされた時……本気で怒り、戦い、助けに身を乗り出すことを、ためらいもしなかったね。僕、あの時からね────」
ゴウン、ゴウン、ゴウンと遠く聞こえる。
「僕は、あの時からきみのことが、大好きになったんだ!
きみがたとえどんな理由で、自分に自信をなくしてしまったとしても、大丈夫だよ。きみは卑怯者なんかじゃないよ。勇気ある人だよ。絶対に。 だって、きみは僕の尊敬する……
────友だちだからね!」
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作者名:名無しさん | 作成日時:2017年12月30日 21時