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「下民が、誰に口をきいている……」
まだこちらを見下しているジャミルの口ぶりにアリババはケッ、と不躾に言い返す。
「下民も領主もここまで来たら関係ねーよ!この盗っ人が。まずはアラジンの笛返せよ!話はそれからだ!」
アリババの言い草にピクッと反応したかと思うと、ジャミルはブルブルと震えながら独り言のようにボソボソと喋り出した。
「ふ、ふざけんじゃねえよ、弱くて、下品で、無能な!!生きてる価値もねえゴミ人間のクセによぉ……」
そんなジャミルに違和感を感じつつもアリババはちら、とアラジンのほうを見る。かなり遠くまで吹っ飛ばされてしまったが、さっき駆けて行った琥珀もいるし大丈夫だろうと判断する。
が、モルジアナがアラジンと琥珀のほうに向かって行く。あんな脚力じゃ琥珀でもすぐに追いつかれてしまう。すぐに自分も行こうとして動くが、足下にレイピアが突き刺さり行く手を阻まれてしまった。
「待ちたまえ君ィ、まだ君の刑は執行されていないじゃないか」
「……刑?」
訳の分からない事を言い出すジャミルにアリババは若干戸惑いつつ睨む。
「そうだ!なんなんだあの化け物は?なんなんだ、一体ここは、なぜ、この僕が、あんな目に!」
脂汗を流し、震え、虚ろな目で何かに怯えているようにも見えた。
「────のせいだ、
お前のせいだ──────っ!!」
「……!?」
ジャミルはガチガチガチと歯を鳴らしべそをかきながらアリババのほうを睨んでいる。さっきからのジャミルの言動に違和感を覚えていたアリババだが、これで確信した。
今までは恐怖や畏怖の対象でしかなかったが────
「よっぽど怖い目に遭ったみてーだな、領主さんよ。でもよ、今更何言ってんだ?ここは『迷宮』だぜ?
地位も、血筋も、名誉も、関係ねえ。 誰もが人生かけて命張る場所!!」
すう、と息を吸って吠えた。
「────怖けりゃ家で震えてな、お坊ちゃんよォ!」
今まで迷宮で恐ろしい思いをしてきたジャミルに、とどめを刺すようにアリババは吐き捨てる。その言葉にジャミルの中で何かが切れてしまったようで、先程の怯えは嘘のように消え去り、レイピアを構え戦闘態勢に入る。
「もういい、黙れ!! 下民には、実力で分からせねばならないようだな!!」
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作者名:名無しさん | 作成日時:2017年12月30日 21時