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いや、もっと細かく言うと崖ではない。さっきまで俺達がいた場所はまるで高台のような場所で、目の前で垂直に途切れていた。あと一歩踏み出していれば間違いなく下に落ちてお陀仏だっただろう。
前方にも目を向けると下はただの谷ではなく、都市、のようにも見える。こんな『迷宮』に都市があるのも度肝を抜かれたけど、一番異彩を放っているのはその中央にある天井まで伸びた塔だった。
俺もアラジンも琥珀も、永遠とも一瞬とも思える時間、それを見つめていた。
「はぁ〜〜〜……」
「すげぇ……
こりゃ、お宝どころじゃねえ……未知の古代都市そのものが眠ってやがった!」
確かにその光景に畏怖もしたが、俺は恐怖心よりも探究心、好奇心の方が勝っていた。
「………なぁアラジン、琥珀、行ってみようぜ!この街のどこかに俺たちの目指す”宝物庫”があるはずだ…
まずはあの、一番目立つ塔から行ってみよう!」
「うん!」
「はいはい」
◇
肉の切れる音がする。脆い肉片は地面に落下し、厭な水音を立てながら砕け散った。
アラジン達3人が古代都市にいる頃、哀れな領主達は迷宮生物に追い込まれていた。
「クソッ きりがない!!奴らの場所へはまだかモルジアナ!?」
声を荒げるがモルジアナからはまだです、と返答が来るばかりだ。
「まだですじゃねーよ、てめえのせーだろ!?この能無しがああああ!
────死ねっ!死ねっ!死ねっ!このゴミクズが!!!」
ジャミルは力任せにモルジアナをドカドカドカと蹴り上げる。モルジアナはただ反抗もせずに頭を抱えて涙を流しながら我慢している。
なんなんだ、この化け物は。ここが最後の道の終着点のはずなのに。竜の尾に真実が在るはずなのではないのか、そう書いてあったのではないのか。
ひとつ、ジャミルの脳裏に浮かんだ事がある。
────あのガキが、俺をだましたのか?
ようやく気付いたジャミルは壁に背を預けガクガクと震え出す。
そこにさっきからモルジアナへの暴行を見ていたアリの迷宮生物が来れば、そこにはもう奴 隷使いの恐ろしい悪徳領主は居なく、ただの臆病者が残っただけだった。
「……ノウナシがァ、ノウナシがァ、てめえのせいだろぉお、このノウナシがァ!!」
「ひ、ひいい!!」
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作者名:名無しさん | 作成日時:2017年12月30日 21時