37話 ページ3
親友が死んだ日から三年目の今日、安室透、もとい降谷零は墓地へ足を運んでいた。
彼の墓地に自分が来た痕跡を残さないために花をたむけることはできないが、生前明るく沢山の人から慕われていた彼の碑石には、すでに沢山の花が彼の死を悼むように添えられていた。
「なあ、スコッチ。お前ならこんな時どうする?」
自嘲気味に、問いかけるように発せられた言葉の裏にいるのはもちろん彼女、白咲Aである。
彼女が何者なのかは依然掴めてはいないが、彼女がもしも組織とつながっていたとしたら自分が消されるのも時間の問題だろうか。
「情けない、ってお前が隣でいつもみたいに笑い飛ばしてくれたらいいんだけどな」
見えない相手を見るかのように優しく細められた彼の目はバーボンでも、安室透でもなく、ただの降谷零そのものの瞳であった。
しばし目を閉じ彼との思い出を蘇らせる。
これはいつしかここに来るたびに行う儀式のようなものになってた。
そしてその度に少しずつ記憶は薄れ、思い出す内容も減って来ていることに降谷零は気がついていた。
それでも、彼が唯一生きていることができる自分の中でだけは、彼を消さないようにするための小さな反抗だった。
「まだお前には当分会いに行くことはできなさそうだな」
守らなければならないもの、この国のためにもまだ自分は死ぬことができない。
再び決心し墓地を後にした彼はその帰路で白咲Aに遭遇することになるのである。
数日しか経っていないのに久しく感じる彼女の顔を見て、かけなくても良いはずの声をかけてしまった自分に驚いた。
いつもならペラペラと出てくる言葉も自然と喉につっかえてしまい、こんな風に誰かと無言を共有するのは久しぶりだった。
「Aさんは、幽霊って信じますか?」
そんな中発した言葉は自分でも驚くほど意味不明で、友人の命日に感化されすぎてしまったなと、少し自嘲した。
降谷零は幽霊を信じてはいない、でも幽霊でもいいから会いたい人ならたくさんいる。
いつも自分は置いていかれてばかりだ。
そんなことを考えていた時にAから帰って来た返答は、
「___分からないけど、でも、幽霊でもいいから会いたい人ならいます」
あまりにも予想外で柄にもなく少し動揺してしまった。
どこか寂しげに笑う彼女の横顔をみるのは初めてで、彼女も自分と同じなのかもしれないという疑惑が浮かんだ。
それと同時にもっと彼女を知りたいと思った。
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かるぴん(プロフ) - この作品が忘れられなくて読み返しました!何度読んでも面白すぎます!ふみさん入院されていたとのことですが、体調はいかがでしょうか?続きが見たいなんて贅沢は言わないのでお元気だとても嬉しいです…。 (8月19日 7時) (レス) @page30 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!読む手が止まりません。主人公のキャラがたってて本当に好きです!続きがありましたら是非読みたいです!! (5月10日 22時) (レス) @page30 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - とっても面白いです!!主さんの体調の安定を祈り、更新を楽しみにしております! (2022年12月25日 23時) (レス) @page30 id: 26a70534cf (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - とても面白いです。更新楽しみにしております (2022年5月28日 4時) (レス) @page30 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
Queen(プロフ) - 詩ジンがツボりました笑とても面白くて更新楽しみにしています! (2022年5月23日 21時) (レス) @page20 id: 937f1ef34f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふみ | 作成日時:2018年6月4日 1時