僕の全てを君にあげる[ naniwa ] (ページ6)

今日:11 hit、昨日:78 hit、合計:30,191 hit

◾︎ 第一印象 ( side 高橋 ) ページ6

.

他のメンバー数人と現場が一緒やった日、
新しいマネージャーだと紹介されて、
俺の目の前に現われたのはその名も“畑井A”

『お願いします～っ』

さらっと挨拶を済ませて、
なんで女なんやろ～～ちょっと面倒くさ～～なんて
思ったのはここだけの話。

でも、そんな気持ちが吹っ飛ぶような出来事は
意外にもすぐに起きた。

その日は朝からちょっと調子悪くて、
でもまあ大丈夫やろ～～って別のマネージャーの
運転する送迎車に乗り込んで、
現場に着いたときのこと＿＿＿＿＿

「高橋さんおはようご･･･」

『っはよーございます～』

「・・・・」

『･･･？なに？？』

「熱、ありますね？」

『へっ？熱？ないで、熱なん･･･！「熱いです」

現場で会って顔を合わせてものの数秒。
俺の体調不良を一発で当てて、それだけじゃなく、
自分でも気付いとらんかった熱まで気付く始末＿＿＿

「ちょっと待って、」

『ええって、大丈夫、』

「だめです、感染症だったらどうするんですか？」

『感染症･･･？』

「インフルエンザとか、そういうのです、」

『あぁ･･･なるほど･･･』

結局この日、まだ日程に余裕があったこともあって
撮影は延期になって、
インタビューだけは代わりに資料をもらい、
彼女がやることになった。

「巻きでやるので、無理の無い程度に。」

『･･･その、えっと、＿＿は大丈夫なん？』

俺も失礼すぎるとは思うけど、
名前をまだちゃんと覚えておらんくて、
ジェスチャーで「あんた」と訴えてみる。

「私はもう、連日高橋さんといますし、
　移ってたら既にアウトなんで大丈夫です。」

『そういう問題なん･･･？』

「感染症ってそんなもんですよ」

『絶対ちゃうと思うけど。笑』

「･･･ちなみに、これ」

『？？？』

そういって俺の前に差し出してきた紙切れは
所謂「名刺」というやつで。
そこには彼女の名前が書いてあった。

『あ・・・』

「そのうち、覚えていただけたら」

『・・・覚えた、A、な。』

「畑井、です。」

『苗字だと堅っ苦しいやん』

この時はホンマにそう思ってただけ。
それしか思ってへんかった。

他のメンバーが親しげに彼女の名前を呼ぶ事に
少しモヤっとするようになるんわ
もうちょい先のこと＿＿＿＿

.