◻︎ 無かったこと ページ40
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あの日の夜、あんなことになってしまったからも
いたって彼は普通だ＿＿＿＿
『 A〜この前言っとったやつ。 』
「 あ･･･うん、ありがとう 」
『 5巻の23ページくらいからめっちゃおもろいから 』
「 細かっ笑 」
あまりに普通だから、私も少しすると忘れちゃうくらい。
でも、正直なことを言えば、
あの日言われた言葉がずっと脳裏に響いてる。
＿＿＿『 時間の問題やったやん、俺ら。 』
＿＿＿『 やましい気持ち、Aは微塵もなかったん？ 』
恭平の言葉に素直に返してしまったことも、
激しく後悔してる。
マネージャーでありながら、
いくらなんでも定期的に家に行っていたのは
本当にまずかったと思う。
でも次第にその時間が楽しくて、終わって欲しくなくて
まだ居たいなぁ、なんて少しでも思ってしまっていた
自分が居ないのは嘘になる。
でも、良くないのはそれを見透かされたこと＿＿＿
でも恭平は意外にも口を滑らせることはないし、
むしろ今まで以上に誰かがいる前では
必要以上に私に関わらないようにしてる感じがする。
これは、どういうことなんだろう？
考えても分からないまま時間は経過して、
その間に恭平も仕事が忙しくなり、
自宅への訪問もほぼなくなっていた。
このままフェードアウトするのが１番で。
もう無かったことにすることが１番。
そう頭では思いながらももやもやしてしまう瞬間は
どうしてもあった。
それから更に数ヶ月＿＿＿＿
「 荷物まとまったら駐車場まできてね 」
『 A、待って 』
「 ん･･･？どうかし･･･！ 」
私たち以外、誰もいない控え室。
あとはもう片付けて帰るだけのこの瞬間。
「 ･･･！っ、こんなとこで何して･･･ 」
『 こうでもせんと、A逃げるやろ 』
「 逃げてなんか･･･！ 」
急に引き込まれたのは恭平の腕の中。
逃げてなんか＿＿＿＿ない。
むしろそっちの方が何事もなかったように＿＿...
『 俺は、無かったことになんかしてへんから 』
「 ・・・・・ 」
恭平のこういうところは本当に意外で。
普段あんなに余裕そうというか、
あっさりしてそうなのに。
『 ･･･Aも、無かったことにせんで 』
抱きしめる力は更に強くなって、
だけどその声は今にも消えてしまいそうだった＿＿＿
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作者名：fumi
| 作成日時：2024年2月22日 17時
