◻︎ スイッチ ページ17
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ふとしたとき、ちらっと彼のほうを見ると、
スイッチを切った状態で、一体何考えてるんだろう？
そんな風に感じることが時々ある。
スイッチの切り替えは大事だと思う。
常にアクセル全開じゃ絶対に疲れてしまうし、
オモテとウラの顔があったって当たり前。
でもそれは決してウラの顔が悪い部分とかではなくて、
どんな社会で働く人にも持ち合わせている
仕事上の“自分”があるという意味。
「 大橋さん、ちょっといいです？ 」
私がそう声をかけると彼は一瞬でスイッチをオンにする。
『 お！Aちゃんなになに〜〜？？ 』
「 ･･･１点確認したいことがありまして。」
『 ええよ〜〜 ！ 』
別に彼にとってこの切り替えは
無理をしているとかじゃないことは分かってる。
長い間この業界にいて、
もう身体に染み付いてる彼の日常でしかない。
でも、一緒に過ごす時間が増えていくたびに思う。
別に仕事仲間にだって、メンバーじゃなくたって
素の部分を見せられる環境であったっていいって。
彼らの仕事は特殊で。
私が会社に向けての顔を持っているというのとは別に
彼らにはパフォーマンスをする上での顔もある。
それは、素の自分とは別に残り２つの表情を
持ち合わせて、切り替えているということ＿＿＿＿
そんなの。正直疲れないわけがない。
「 大橋さん 」
『 ん〜〜なになに〜〜？？ 』
「 スイッチ、切ってて大丈夫ですよ 」
『 ん？なに？今イヤモニとかしてへんけど･･･ 』
「 大橋さんのスイッチです。ここですかね？ 」
冗談半分に頬をツンとしてみると
一瞬で目の色が変わったのが分かった。
『 …Aちゃんやって常にオンのくせに 』
「 そりゃ仕事中ですから 」
『 俺やってそうやで？ 』
「 大橋さんは今、休憩中です 」
そんなことを言えば聞き慣れた声で笑う＿＿＿＿
『 んーでもやっぱり･･･ 』
「 ？？！ 」
『 Aちゃんもオフ 』
今度は大橋さんが私の頬にそっと触れた＿＿＿＿
『 ちょっと休もうや、外行かへん？ 』
「 外、ですか？ 」
『 うん、ええ天気やったで、外。空気吸いに行こ 』
さらっと手を引いて、スタジオの外に私を連れ出した彼は
普段より少し控えめに、でも普段以上に優しく笑っていて、
その笑顔に引き込まれそうになったことは
自分だけの内に留めておこうと思う。
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作者名：fumi
| 作成日時：2024年2月22日 17時
