その薔薇は ページ13
俺は今日から離宮に住む。
今まで暮らしていた王妃宮には二度と立ち入ることは出来ない。
最後くらいいいだろうと近衛兵を半ば強引に説得して、王妃宮を一人で巡る。
稽古をした庭。授業を受けた勉強部屋。
母上がよく居た、大きな書庫。
「………あ」
いつの間にか、あの部屋に来ていた。
全てが砂になり、風に運ばれて消えてしまった母上の部屋を歩く。
ここにはベッドがあって、眠れない夜にはいつも、母上が子守唄を歌ってくれた。
母上の子守唄は沢山あって、聴きたい唄を言うと、眠れるまでずっと歌ってくれていた。
「……もう一度、あなたの唄を」
こっちにはテーブルがあって、母上とよくチェスをした。
誕生日のプレゼントでもらったチェス盤は、母上と俺とのゲームだけで使う特別なものになった。
俺が負けを認めると、母上は不思議そうに首を傾げて、優しく微笑んで頭を撫でてくれた。
「もう一度だけ、あなたとチェスを」
この辺りには窓。
母上に抱きかかえられながら見る夕陽が好きだった。
陽のあたる場所全てが、俺のものになるかもしれない。
その言葉が、どれほど嬉しかったかわからない。
「あと、ッ一度でいいから、あなたと夕陽を」
あっちにはクローゼット。
母上にはよく、女のような格好をさせられた。
物静かで、病弱だった母上が、心の底から嬉しそうな顔をするから。
母上が喜んでくれる時間が、とても幸せだった。
「もう、いちど、だけ…。…あなたの笑顔が、見たい」
部屋の中心で、力なく膝を折る。
「っ…ひっく……ごめんなさい、おかあさま…」
あの時、見て見ぬふりをしなければ。
顔色の優れないおかあさまを、すぐに医官に診させていれば。
「ごめんなさい、ごめんなさい…。っぅあ…うわぁぁあ……！！」
強く風が吹き、周囲の砂が砂埃になって宙を舞う。
大量の砂に覆われていた床のタイルの破片が、少しだけ顔を出す。
「っぁぁ…うぅ…ひぐ、……ぅえ…？」
溢れてくる邪魔なものを袖で拭い、やっとはっきりしてきた視界に映ったのは、床のタイルに取り付けられた取っ手のようなもの。
なんだ、これ？
上手く力の入らない足を引きずりながら、近寄って観察する。
そうするうちに、頭も冷静になって落ち着いてきた。
ここは…母上の化粧台があった場所…？
母上が、なにかを隠していたのか？
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ニーな - お？アバルがイカレてきた？こういう展開好みです 果たして無事なのだろうか... (4月24日 10時) (
レス) @page12 id: 8c9f62e83c (このIDを非表示/違反報告)
ニーな - レオナはどんなシャンプー使ってるんでしょうね？獣人だから匂いは控えめのやつでしょうか？ 顔文字いっぱいあるの可愛くて好きです (4月21日 9時) (レス) @page10 id: 8c9f62e83c (このIDを非表示/違反報告)
アイコン(プロフ) - ニーなさん» ありがとうございます！欲望しか詰め込んでませんので、よく分からない展開になることが多いですが、お望みのストーリーはじゃんじゃん募集してますので！どうこれからもお気軽にコメントくださると嬉しいです！ (4月17日 20時) (レス) id: 2cbdf473b4 (このIDを非表示/違反報告)
ニーな - すごく面白いです！ (4月17日 10時) (レス) @page7 id: 8c9f62e83c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アイコン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/satokotixyann/
作成日時：2024年4月9日 18時
