崖っぷち家政婦です。4

JN &TH 3 ページ36

TH side



『…ヌナ寝ちゃった。』


JN『え〜？どこでも寝るんだから。…よいしょ。』



ジニヒョンがヌナの横に移動して寝転ぶ。



ヌナを挟んで川の字で寝転ぶ俺達。

ヌナは俺に背を向けて寝ているからジニヒョンと向き合っている。


ヒョンがヌナのほっぺたをつっつく。



『…ふごっ。』


控えめのイビキをかいていたヌナが一瞬呼吸を止めた。



ヒョンが口に両手を当てて声を我慢して笑っている。

何回か同じことをやって、ついには鬱陶しそうに俺の方に寝返りをうつヌナ。



俺はヌナの顔を出来るだけそっと撫でた。


男2人と一緒だというのに無防備にイビキをかくヌナ。

それだけ心を開いてくれてるってこと？


いや、このヌナは本当にどこでも寝ちゃうタイプだよね。


俺はヌナの鼻がつきそうなぐらい近寄ってまじまじと眺める。


客観的にみると美人じゃない。

そこまで可愛いってわけでもない。

でも好きになるって、誰よりも輝いて見えるんだね。



JN『やー、テヒョンイは昨日ヌナと居たんでしょ？独り占めは駄目だよ。ちょっと代わってよ。』



ヒョンはぶーぶー文句ばかり言う。

俺はぐっと我慢して、ソファーに移動した。


ヒョンは俺がいた場所に寝転び直してヌナを引き寄せた。


その瞬間、俺は胸がぎゅっと苦しくなって膝の上で拳をつくる。

掌がじんわりと汗をかいて爪が肉に食い込んだ。



俺は初めて知った。


人を好きになると、その人の事が知りたくなる。

その後に自分を知ってもらいたくなる。

仲良くなると、その人に触りたくなる。

逆に触って欲しくなる。


ここまでなら良かった。



だけど俺達の関係は普通ではないから。


7人で共有するという事は、平等であるという事。



今、目の当たりにして思う。



自分だけのモノにしたい。


昨日俺のモノにしてしまえばよかった。



でもその先は？


きっと7人同じように"共有"するんだ。


その時その瞬間に満足しても終わりがない嫉妬がずっと付き纏う。


皆どう考えてるの？

それでいいの？

俺はそれでいい？

わからない。


いや、わからないフリしてるんだ。


だって、いいかどうかなんて関係なくて。


俺以外の誰かを選ばれてしまったら耐えられない。

笑って祝う事なんか絶対できない。


だから"共有"なんだ。


初めて人を愛したけれど、その人の心を自分のモノに出来ない。

しちゃ駄目なんだ。


俺の手の力が徐々に緩んでいった。

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