崖っぷち家政婦です。

うらやましい。TH ページ37

TH side



水の流れる音に気づいて、ふとキッチンを見た。

あっ、ヌナだ。


ご飯を食べ終えて俺はジョングクとゲームをしてた。

これがオフの日の流れだから、今日からヌナがいるって事をすっかり忘れてた。


ヌナってば言ってくれたら手伝うのに。

キリよくゲームが終わったし(ジョングクに負けた)ちょっと手伝いに行こうかな〜！


ジョングクの「逃げるんですか」の声は無視無視。



〜♪ 〜〜♪

最近のお気に入り曲を口ずさみながらキッチンへ向かう。



…あれ？ヌナの横にホソギヒョンがいる。

なんだ〜お手伝い先越されちゃったな。



なんとなく2人の中に入れなくて、俺はキッチン横のカウンターに頬杖をついて座る。

対面式じゃないから2人は俺に気付かない。


やる事もなかったし、そのままボーッと2人の背中に視線を送っていた。


そしたらさ、2人が一瞬向き合ったんだ。


あ、ヌナが威嚇する時の目をしてる。


あれ面白いよね、ジョングクと勝負できるよ。



…ヒョンが笑ってる。

でも、いつもみたいな大げさな笑いじゃなくて、昔よく見せてくれた笑顔だ。



その後すぐに前を向いてお皿を洗い出す2人。

ヒョンがだいぶ長くお喋りしていた。

何を言ってるのかまでは聞こえないけど、あのヒョンが1人でこんなに話す事ってあったっけ？



ヌナは黙ってお皿を洗ってたけど、話終わったヒョンの顔が一瞬ヌナを見ていた。


すごくスッキリしたような、安心したような。

そんな顔をヌナに向けていたんだ。




うらやましい。



すごく、うらやましい。



俺の心が素直にそう言っていた。


俺達7人はいつも一緒だ。


だけど、いつしかメンバー達はそれぞれ本当の気持ちを話さなくなってしまった。


感じた事・嫌な事・嬉しかった事、昔はなんだって7人で共有していた。


皆を近くに感じたし、俺も何でも言い合えた。


でも今は正直少し距離を感じる。

少なくとも俺は。


テレビや雑誌のインタビューで俺に話を振られると緊張してしまうんだ。

音楽番組でマイクを向けられると一瞬メンバーを見てしまう。


"俺、話してもいい？"


誰も何も言わないし、止められもしないんだけどつい意識してしまう。

きっとマズイ事を言ってもナムジュニヒョンがうまくカバーしてくれるんだろうけど。



ヌナ、俺も…



そう思うと同時に俺の足がキッチンへ向かう。

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