崖っぷち家政婦です。

皿洗いと私とあなた。 ページ36

皆が食事を終えたみたいで、1人また1人と席を離れて行く。



おい少年達よ皿ぐらい流しに持っていけ。

まったく、だからゴミだめになるんだよ。


カチャカチャと食器を重ねては流しに持って行く。


そんな私に気付いたナムジュンさんが手伝ってくれようと動いたけど、丁重にお断りした。


そしたらホソクさんが代わりに手伝ってくれてあっという間に食器達は流しに移動した。


ここにスポンジ、ここに洗剤、流し用品はこの棚にあるよ、と身振り手振りで教えてくれる。

更にはついでだからと皿洗いまで手伝ってくれる優男ぶりだ。


これは間違いなくモテる男だ。

このさりげなさ、数々の女達を泣かせてきやがったな！？


目を見開いてホソクさんを見る。

ホソクさんは独特な声で笑いながら私を見る。



JH 『やー、ヌナはなんでそんなに無表情なの？怒った時とか泣きたい時とかどうしてるの？すっごく面白い時はやっぱり笑うんだよね？』


ホソクさんがお皿を拭き上げながら独り言のように話している。

私は何を言ってるのかわからないから洗い物の手を止めてホソクさんをもう一度見た。



JH「わからなくて、いーです。」

JH「ぼく、ひとりで、はなし、するです〜。」



リビングでは他のメンバーの楽しそうな話し声や、テレビの音などが響いている。


私は洗い物を再開しながらホソクさんの声に耳を傾けた。



JH『有難い事だよね必要とされるのは。俺達、最近やっと人気が出てきたみたいで、自分がこんなに有名になるなんて思ってなくて。本当の事言うと、少し戸惑ってる。』


ホソクさんの手が止まる。



JH『俺は皆が笑ってるのが好き。だけど最近あれ？って思うことが多くなってきてさ。うまく言えないんだけど…だからこそ俺は笑ってようって。楽しく在ろうって…。』



多分ホソクさんは自分自身と会話してる。

宿舎生活ってある意味孤独なのかもしれない。

こんな見ず知らずの言葉通じない家政婦にしか話せないなんて。



相変わらずホソクさんは手が止まっていて何かボソボソと話している。


顔は笑ってるのに悲しそうに見えた。

しかし私は初めて会った人にアドバイスできるほど人生経験はないのだ。すまん。

だから黙ってお皿を洗い、ホソクさんの悲しみも流れるように願いながら汚れを落とした。



そうする内にホソクさんも少しは胸のつかえが取れたのか、またお皿を拭きだした。


そして日本語で「ありがとう。ヌナ。」と言ってくれたのだ。

うらやましい。TH→←ちょっとしたイタズラ。JN

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す