崖っぷち家政婦です。

ヌナだった。JH ページ19

JH side


どうしたナムジュナ。

何を言われたナムジュナ。


安心しろ、お前の骨は拾ってやると皆で背中を押して俺達を代表して謝罪に乗り出したリーダー。



日本語でなにか話し合った後、アワアワ焦っていたあいつの動きがピタッと止まった。

Aさんが何かボソボソと話している。



ナムの体が大きいせいでこちらからは全くAさんが見えない。

その後何事もなかったかのように無表情の彼女がナムの横をすり抜けて俺の方に来た。



ああどうしよう、気まずいなぁ。

かなり俺より年上なんだよね。

もしかしたら何か気に障るようなことしちゃったかも。





ええっ！




どうしようか迷っていたらAさんがいきなり俺の右手を両手で包んだ。



"ダイジョブ ダイジョブ〜、あなた、声、おおきいですね でも ダイジョブ"


いきなりへんてこな韓国語で話しだした。



俺は怒られるのかとばかり思っていたのでびっくりして彼女が宿舎に来て初めてしっかりと顔を見た。


ユンギヒョンより白いんじゃない？と思った肌に、ぱっつん前髪。

くりっとした日本人特有の目に丸くて小さな鼻。

言ってみれば地味な顔立ち。

綺麗でもブスでもない。

でもとても30歳にはみえない。




「こえ、うるさいですか？しずかにしますね」

ハハハと小さく笑って日本語で伝える。



"ちがいます。大きな通る声だけど、私 あなたの声、良いと思う。独特だよね。…あー、韓国語でなんて言うんだろう。 あっ！"



Aさんが無表情で困ってる。

日本語でブツブツなにかを言ったと思ったら



"好きですよ"



なんてたどたどしい韓国語で言うもんだから顔がポッと熱くなる。



なんか言わなきゃ、とアウアウしてると右手が軽くなってAさんが離れたことに気づいた。


ああ、少し残念。

でもこれからこの宿舎で共に生活していくんだよね。

少しずつでも仲良くなれたらいいな。


優しく包まれた右手にまだ少し感覚が残っていて、俺はぎゅっと確かめるように手に力を入れてみた。

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