不滅の愛を 2【煉獄杏寿郎】

84.化学教師の悩み事 ページ34

秋の風が落ち葉を遊ばせ、

　私の足元で踊りを踊っている。



　廣屋先生の教育実習も早いもので最終週になった。



　天気が良いで保健室の布団を干そうと

　布団干しを外に出していた。


　今はちょうど来室者もいないから、

　今のうちに…と、敷布団を持ち上げて外へ出る。


　意外と重い布団を持ったまま歩くと

　全く前が見えず、足がもつれてしまった。


「あっ！！」


　転ぶと思った時、前から誰かが支えてくれた。


　私は身体の角度を変えて、その人物を確認すると、

　そこにいたのは化学教師の伊黒先生だった。


「す、すみません！ありがとうございました。

　伊黒先生、怪我していないですか？」


「…いや、大丈夫だ。

　俺はそんなにやわじゃない。

　別に気にするな。

　だが、Aは危なっかしいところが多すぎる。」


「はい…」


　伊黒先生は私から布団を取り上げると、

　布団干しまで運び、干してくれた。


「ありがとうございました！」


「構わない。

　だが、ひとつ教えてもらいたいことがある。」


　伊黒先生が私に？なんだろう…？


「私がお教えできることであればなんなりと。」



「その…」


　伊黒先生は目を逸らして口籠る。



「はい？」



　私が見つめていると、背を向けて口を開いた。




「…女性がもらって嬉しいものはなんだ？」




　女性がもらって嬉しいもの…？




「あっ！伊黒先生、誰かにプレゼントしたいのですね！」


　私が顔を綻ばせて満面の笑みで言うと

　伊黒先生は耳を赤くしながらこちらを振り返る。


「うるさい。声が大きい。

　そんなにニヤニヤするな。だらしない。」


　ぶっきらぼうなことを言うけど、

　この反応は照れている気がする。


「ふふ。

　どんな場面でのプレゼントかにもよりますが、

　アクセサリーやお財布、バッグ、花束とかが無難ですかね。

　でも、一生懸命に選んでくれたものなら

　なんでも嬉しいと思いますよ！」


「そうか。…分かった。

　時間をとってすまなかったな。

　分かっているとは思うが、俺が今聞いたことは」



「誰にも内緒、ですね。」



　私がそう言って微笑むと、伊黒先生も柔らかく微笑んだ。



「…ありがとう。」



　伊黒先生はそう言うと、職員玄関の方へ向かっていった。




　
　

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