不滅の愛を 2【煉獄杏寿郎】

83.熱中するのは ページ33

「廣屋先生、

　頑張っていますね！」


　杏寿郎さんの家の最寄りのスーパーに着いた私たちは、

　夕飯の食材を二人で選んでいた。


　隣を歩く彼は、

　買い物カートを押しながら

　私に優しい笑みを向ける。



「うむ。実に熱心だ！

　生徒と打ち解けるのも早くて感心している！」



「そうですか！

　私はすぐには打ち解けられなかったなあ…

　すごいですね。」



　私は卵を買おうと売り場で止まって卵を選んでいた。


　二人分だからなあ…でも、卵は結構使うし…と、


　悩んだ末に決めてカゴに入れようと思った時、


　気づいたら杏寿郎さんがいなかった。




「あれ！？杏寿郎さん！？」



　あたりを見渡すと、卵売り場を通り過ぎ、

　そのまままっすぐカートを押しながら歩いている。

　私は小走りで杏寿郎さんを追いかけて

　彼に声をかける。



「杏寿郎さんっ…！！」



「ん？…あっ！！すまない！！」


　目を丸くして驚いた彼の顔はどこか幼さがあった。



「ふふっ」


　その顔があまりにも可愛くて、つい笑ってしまった。


「本当にすまない！！

　実習生の授業のことを考えていたら…

　俺としたことが…申し訳ない！」



「いえ、気にしていないので、

　そんなに謝らないでください！」



　杏寿郎さんは私の手から卵を取ると

　優しくカゴに入れた。



「杏寿郎さんも廣屋先生に負けないくらい

　熱心ですからね。」


　私の言葉に眉を下げて微笑んだ。


「しかし、前が見えなくなってしまうのは良くないな！

　本当に不甲斐ない…！」


　杏寿郎さんはそう言うと、少し照れながら俯いた。


　私はおもむろに彼の肩を2回とんとんっとたたく。


「ん？」


「杏寿郎さんが熱中しすぎて

　他が見えなくなった時は、

　私がこうして肩をたたきますよ。

　そうすれば、気づいてくれるでしょう？」


　私が微笑むと、

　杏寿郎さんは困ったような、けれども真剣な表情で

　私の手を握り、落ち着いた声で告げた。



「それは困ったな…


　俺が熱中してしまうのは


　ほとんどが君のことだというのに。」



「え！？」



　至って真剣な顔で言うから


　私は何を言えばいいのか分からず、


　静かに顔を赤く染めていた。

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