不滅の愛を 2【煉獄杏寿郎】

77.面倒見の良い人 ページ27

風に吹かれる葉は


　落とさないで欲しいとばかりに


　枝にしがみついている。


　教育実習が始まってから3日が過ぎた。


　放課後、職員室の後方の長机では、

　杏寿郎さんが実習生の廣屋先生と一緒に

　授業研究をしていた。



「この授業で廣屋先生が

　生徒たちに気づかせたいこと、その願いはなんだ？」


「えっと…そうですね…

　その時代の文化の違いについてですかね。」


「なるほど。そうだな！

　そうなると、対比して視覚的に訴えるのが効果的だ。」


「対比ですか。」


「資料集を使って先生が説明するのも良いが、

　ひとつの案として、グループごとに

　それぞれの時代の文化の特徴を調べてもらい、

　互いに発表させるのも良いかもな！

　そこからさらに対比させて気づかせる。

　あくまでも、生徒主体で！」


「生徒主体…！勉強になります！」


「うむ！あとは君の思うように、

　ただこの授業で学んで欲しいことはブレないように

　授業づくりをすると良い！」


　さすがだなあ。

　杏寿郎さんは後輩の面倒見が良い。


　
「お疲れ様。

　コーヒーいかがですか？」


「A先生、ありがとう！」


「ありがとうございます。」


　私は二人にコーヒーを差し出すと、


　廣屋先生のノートに目を落とす。


　杏寿郎さんの助言を事細かにメモしている。

　
　すごい…



「廣屋先生は、努力家ですね。

　このノートはきっとあなたの財産になる。」



　廣屋先生は私を見ると、照れ臭そうに笑った。



「Aさん…いや、A先生にそう言われると

　嬉しいです。」



「頑張ってね。」



　私ほそう言ってその場を離れようとすると、


　杏寿郎さんに呼び止められる。



「A先生、ちょっと。」



　杏寿郎さんは手元にあったメモ帳に

　何やらメッセージを書くと、私に差し出した。



「さあ、少しコーヒーブレイクをして

　明日の授業準備をするとしよう！」



　私はその場から少し離れてメモ用紙を開く。



　" A、お疲れ様。

　 お弁当ありがとう。美味しかった！

　 保健室の君の机の上に弁当箱を戻しておいた。

　 洗うことまで任せてしまって申し訳ない。


　 そして、すまないがしばらくは帰りが遅くなりそうだ。

　 連絡は返すように努めるが、

　 遅い時は構わず寝て欲しい。"



　メモ用紙をそっと閉じると、私は保健室へと向かった。

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