69.正々堂々 ページ19
〈杏寿郎 side〉
Aがお手洗いに行ったっきり戻ってこない。
仲間との時間が楽しくて、
今日は俺も少し飲みすぎてしまった。
さすがにもう10分くらい戻ってこないので、
心配になり、探しに向かう。
そういえば宇髄もしばらく見ていないな。
お手洗い場に向かうが、女性側には入れないので
店員さんに声をかける。
「今見てきましたが、誰も入っていませんよ。」
「そうですか。お手数おかけしました。」
まさか外か？
店の外に出ると、目に入った光景に勝手に身体が動いた。
「宇髄、離れてくれないか。」
俺はAの頬に手を触れ、
口づけをしようとしていた宇髄の肩を掴む。
「…煉獄か。」
「悪いが、俺は彼女と付き合っている。」
「ああ、そんなの知っている。」
知っている…？
それでいてなぜ？
「煉獄、すまんな。
でもよ、俺もAに惚れちまったんだ。
無防備なこいつ見ていたらつい触れたくなってよ。」
秋の満月は雲の陰に隠れてしまう。
「そうか。
ならば正々堂々と俺と戦ってはくれないか？
無論、負けるつもりは毛頭ない。」
薄く光が差し込み、
隠れていた月は再び顔を出す。
すると、宇髄はため息をついた。
「眩しいねえ。
お前たち眩しすぎるんだよ。
ほんとっ、ムカつく。」
「急になんだ！」
宇髄は頭をかく。
「お前らがお互いに想いあっているのは
見ていれば分かる。
それを見せつけられる度に
イライラしてしょうがねえ。
でも、お前といるAの笑顔は最高に可愛い。
その笑顔が俺に向けられることはないんだろ？」
「それは分からないぞ。
人の心は移りゆくものだ。
もちろん、俺はそうはさせないように
彼女をいっとう大切に愛する。」
宇髄は困ったように微笑んだ。
「ははっ！
なんだよ、もうこの時点で負けてるわ、俺。
煉獄には敵わないわ。」
「俺はいつでも受けて立つぞ。」
「お前のそういうところに
Aは惚れたんだろうな。幸せにしてやれよ。」
宇髄はそう言うと、店の中に入っていった。
満月はAを照らす。
白い肌が透き通るように綺麗で俺は目を奪われる。
「本当に君は隙だらけだな。」
月に見せぬようにと、俺は月に背を向けて
そっと彼女の唇に口づけを落とした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 334人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狐姫(プロフ) - 映画好き人間さん» 楽しんでいただけて光栄です！質問についてですが、お褒めにあずかり恐悦至極に存じますが、全くの一般人です。空想妄想で物語を作るのが好きなので、浮かんだ言葉や設定を繋ぎ合わせております。本当、勿体無いお言葉をありがとうございます。 (7月27日 10時) (
レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
映画好き人間 - 毎日楽しく読ませていただいてます。作者さんの書く煉獄さんは本物の煉獄さんで大好きです。内容も素敵ですし、胸をときめかせながら読んでます。単純な質問なのですが、もしかして小説家ですか？ 小説の内容も表現も凄くて、売られてる小説ぐらい上手ですので……。 (7月26日 13時) (レス) @page48 id: f9c87e3b18 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - nkmrさん» こちらこそ、お読みいただきありがとうございます！寒い時期の温泉良いですよね( ˊᵕˋ ) 続編も引き続きお楽しみください！ (2021年12月30日 10時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
nkmr(プロフ) - 年末の忙しい時期に更新ありがとうございます。続編も楽しみにしてます(･◡･)私も先週温泉に行ったので情景が浮かんでより物語に入り込んじゃいました(*´꒳`*) (2021年12月30日 2時) (レス) id: 1ab27b7589 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - みいさん» みいさん、いつもありがとうございます！デレてもらえるなんて嬉しいです。こっそりデレちゃってください( ˊᵕˋ ) (2021年12月19日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：狐姫 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時：2021年12月1日 20時
