不滅の愛を 2【煉獄杏寿郎】

61.繋ぐバトン ページ11

〈杏寿郎 side〉


「位置について、


　よーい、ドン！！」


　合図とともにスターターピストルが鳴らされた。



　剣術道場の師範をしている父の元で

　よく稽古をしていたため、袴で動くのは慣れているが、

　全力で走ったことはない。


　そして何より、歴史に関係があるものがいいので

　今回は新撰組の羽織袴だ。

　稽古の時に着ていたものとは違うため、少々慣れない。


　服装を言い出した者だからと、

　俺は今回のリレーで100メートルを走ることになった。

　もう一人100メートルを走るのは宇髄だ。

　彼は忍者のように足が素早い。



　第1走者の冨岡がスタートし、

　流れるような走りで不死川へとバトンを繋ぐ。



　第2走者の不死川は上半身はほぼ着崩して走っている。

　風のように速いな、さすがだ。


　そしてすぐに第3走者の伊黒にバトンが渡った。

　マスクをしていて走りづらそうなのに

　それを一切感じさせない走りだ。



　他の有志チームもサッカーボールを蹴りながら

　バスケ部はドリブルをしながらと

　どのチームも差がない争いだ！


　日頃の鍛錬の賜物だ！素晴らしいな！



　
　伊黒がこちらに近づき、

　俺はバトンを受け取るように手を出して待つ。


　ゆっくり足を動かし始めて


　バトンを引き継ぐ。


「…煉獄、行けっ！」


「うむ！任せろ！」


　俺はバトンを受け取ると、

　一気にスピードを上げる。



　集中して、呼吸を整えろ。


　力強く地を蹴って、


　前だけを見て次の走者へと


　確かに繋ぐために。



　
　久しぶりに全力で走っている。


　この風を切る感じ、どこか懐かしい。


　羽織袴を着ているなど

　全く感じないほどに足は前へと進む。




　前方に次の走者の宇髄が見えた。


　宇髄はこちらに手を伸ばして顔を向けている。




「…宇髄、あとは頼んだぞ。」



「…おう。俺が必ず最後まで繋げてやるぜ！」




　バトンを引き継ぐ時にそう言うと、


　宇髄は颯爽と駆けていく。



　次第に小さくなるその姿を見つめ、


　頼もしい背中に俺は自然と笑みが溢れた。





　晴天の下、高く上る太陽に手をかざし


　俺は一人呟いた。




「宇髄、君は必ずやってくれる人だ。








　あの頃もそうだった。


　命を賭けて俺の想いも胸に


　未来へと繋いでくれるんだ。」

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