不滅の愛を【煉獄杏寿郎】

41.灯りが照らす心 ページ41

「んっ…」


　杏寿郎さんは唇を離すと

　ベッドサイドの間接照明に手を伸ばす。

　温かな灯りが二人を照らす。


「疲労で痩せるのはやめてと先程言ったが…

　それ以前に君は保健室の先生だろう？」


　彼の瞳が照明の灯りで金色を帯びる。


「はい…」


「養護教諭が不摂生で痩せるのはいけないなあ。


　そうだろう？A先生。」



　肩から鎖骨をなぞって指先が下へと降りていく。


　彼の指が私の太腿に触れた時


　自然と身体が強張った。


「…っ」



　すると杏寿郎さんは手のひらを使って


　優しく撫でた。



「…怖かったな。嫌だったよな。

　君を守ることができなくてすまない。」



「…え？」


　杏寿郎さんには言っていないはずなのに…


「すまない。今朝、俺から冨岡に聞いたんだ。

　だが詳細は聞いていない。」



　そうだったんだ。

　昨日、改札前まで冨岡先生も一緒だったところは
　
　杏寿郎さんには見えていないと思っていたけど、

　見えていたんだ。



「あの…」


　杏寿郎さんは私の身体を起こすと

　優しく抱きしめた。



「思い出すのは辛いだろう。

　何も言わなくていい。」


　肌と肌が重なって杏寿郎さんの温もりを直に感じる。


　辛かったら甘えても…いいんだよね？


　杏寿郎さんを信じて言ってみてもいいんだよね…？
　


「怖かった…

　辛いけど、一人で背負うのは耐えられない…

　本当は…杏寿郎さんに…知られるのが嫌で…

　他の人に触られて汚いと…思われてしまうかも…とか…」


　杏寿郎さんは私の頭をあやすように撫でる。


「でも…やっぱり、このことを無かったことにして

　杏寿郎さんにも言わずに生きるのは…辛い…」



「俺は君のことならなんでも受け止める。」



　彼を信じて…



「電車で…知らない男の人に…

　触られ…ました…

　自分の奥を…触られて…しまいました…」
　


　溢れる涙を集めるように

　杏寿郎さんはそのひとつひとつの粒を

　指で拾っていく。


「嫌だったな。辛かったな。

　もうそれ以上は言わなくていい。」


　杏寿郎さんは私の背中をさすって告げる。



「言いたくないこと、言いづらいことを

　俺に話してくれてありがとう。


　君がそんな奴のことなど忘れてしまうくらい

　俺が君を愛そう。



　…触れてもいいか？」



　
　温かな照明の中


　私はゆっくりと頷いた。

　

　

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