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32.扉の向こうで ページ32

ベッドに顔を伏せていると


 静寂を切り裂くように着信音が鳴った。


 携帯の画面には愛おしい人の名前。



「…はい。」


「A、家に着いたか?」



「あっ…すみません…

 無事に着きましたよ。」


「そうか。それは良かった。」


 電話の向こうから雨音が聞こえる。


「A?」


「はい。」



「何かあったのだろう?


 言いたくないなら無理には聞かない。


 俺の顔を見るのが辛いなら無理には会わない。」



「…」



 杏寿郎さんの歩く音が携帯から聞こえてくる。



「でも、君が泣いているのなら

 俺は少しでもそばにいたい。

 笑顔にしたい。」


 トン、トン、トンと階段を上がる音がする。



「玄関の扉の前においで。」



「え…?」



「扉、開けなくて構わないから。」



 私はベッドから身体を起こして

 
 ゆっくりと玄関へと向かう。


 コンコンコン


 っとノックの音がした。


 私は同じように


 コンコンコン

 
 っと3回ノックをする。



「俺はここにいる。


 君が辛いのならこうしてそばにいる。」



「杏寿郎さん…」



「開けなくていいから。

 隣の家は見たところ留守なようだ。

 遅くならないうちには帰るから、

 少しだけこうして小さな声で話をしよう。」


 私は玄関の扉に背中を預ける。


「はい。」


「今日はな、君がいなくて大変だったんだ。」


 杏寿郎さんは何があったのかを聞いてはこない。


「そうなのですか?」


「うむ。高等部1年筍組の嘴平伊之助分かるか?」


「はい。」


 気を遣って聞いてはこないんだ。

 今はこういう他愛もない話が落ち着く。


「嘴平少年が相変わらず靴を履かないので


 不死川が廊下を追いかけていたんだがな、


 どうやら画鋲を踏んだらしく、


 何故か逆に怒り始めてな…」




 電話越しの彼の声が心地いい。




 10分くらい話をすると、ホッとしたのか

 次第に瞼が重くなる。



「A」



「はい?」



「もう眠いだろう?


 寝室に向かって。」



「…でも」



「いいから、早く寝室に向かって。」



 私はそっと玄関の扉に手を合わせる。



「杏寿郎さん…」



「ん?」



「ありがとう。」



 すると、すすっと向こう側から扉に手を当てる音がした。



「どういたしまして。今日はゆっくりおやすみ。


 君が寝室に向かったら、俺も帰るとしよう。」







「はい。おやすみなさい。」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - nkmrさん» いつもコメントありがとうございます!続編も引き続きお楽しみいただけるよう、頑張りますね( ˊᵕˋ ) (2021年12月1日 20時) (レス) id: d8f3f4bc3f (このIDを非表示/違反報告)
nkmr(プロフ) - 天元さんの発言に、新しい登場人物の匂わせで余計に続きが気になる終わり方…(*´꒳`*)続編も楽しみにしてます! (2021年12月1日 0時) (レス) id: 1ab27b7589 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉さん!私もなんとか乗り越えました。コメントありがとうございます。その願いを胸に物語を書き続けますね! (2021年11月29日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 最終話、なんとか乗り越えました。狐姫さんのお話の煉獄さんと夢主さんは、不滅であることを願っています!! (2021年11月29日 5時) (レス) @page45 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - nkmrさん» nkmrさん、コメントありがとうございます!アニメ版、まもなく最終話ですね。まさに私の物語で描く煉獄さんは、あの優しい雰囲気をイメージして書いているので、それが伝わっていてとても嬉しく、感無量の極みでございます。最終話、一緒に乗り越えましょうね。 (2021年11月28日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年11月15日 18時

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