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19.足踏みを始めよう ページ19

「あ、坂田くんおはよう!」


 珠世先生が出た後すぐに

 保健室登校をしている高等部2年の坂田くんが登校した。


 なんだか今日はいつもより元気がなさそうだ。


「今日はなんだか元気がなさそうだけど、

 何かあった?」


 坂田くんは鞄を机の上に置くと

 ソファに腰をかける。



「いや…何もないですよ。」



「そう?

 何かあったら、言いたい時にいつでも言ってね!」


 私が坂田くんが登校したことを知らせようと

 担任の冨岡先生に内線を入れようとして

 受話器に手を伸ばした時、

 突然その手を止められた。


 生徒と言っても、相手はもう16、17歳の男の子。

 いや、もう力に関しては男と言った方が適している。


「いっ…」


「ねえ、A先生。」


「…どうしたの?」


 受話器の上の手を背後から

 力強く押さえられていて動けない。


「教えてよ。」


「な、何を…?」


「俺はさ…どうしたらいいの?

 自分でも分からないんだよ…。」


 その声は震えていて

 心が叫んでいるようだ。


「…うん。」


 押さえられた手がズキズキと痛む。


「…戻りたいよ。


 俺だって…みんなと…友達と…


 一緒に教室で授業受けたいんだよ…。」



「うん。」



「でもさ…

 行こうと思えば思うほど不安になるんだよ。

 足が震えるんだよ…」


 坂田くんは手に力を込める。


「…親の期待にも応えたい。


 優秀でいたいし、部活も頑張りたい。


 
 でも失敗したら…



 怖い。」





「怖いよね。

 できることなら失敗はしたくないよね。」


 私の声に、坂田くんは一度手を離す。


 離された手は真っ赤になっていた。



「人の前では良くありたいと思うのは悪いことじゃない。

 坂田くんはよく頑張っているよ。

 サッカー部もエースで頑張っていたの知っているよ。

 勉強も運動も…そつなくこなしていたよね。」



 坂田くんは目を見開いてその瞳を潤ませる。



「でも、なんでも頑張っていると

 身体は思っているよりも疲れちゃうから…

 時々張り詰めた糸を緩ませていいんだよ。


 保健室(ここ)はそういう場所。


 ありのままの君でいいんだよ。」
 




「A先生…」



 私は坂田くんをそっとソファに座らせる。




「無理な時は休んでもいい。



 立ち止まってもいい。


 今は歩き出すための足踏みを始めよう。



 大丈夫、私もついているから。


 焦らず、一緒に考えよう。」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - nkmrさん» いつもコメントありがとうございます!続編も引き続きお楽しみいただけるよう、頑張りますね( ˊᵕˋ ) (2021年12月1日 20時) (レス) id: d8f3f4bc3f (このIDを非表示/違反報告)
nkmr(プロフ) - 天元さんの発言に、新しい登場人物の匂わせで余計に続きが気になる終わり方…(*´꒳`*)続編も楽しみにしてます! (2021年12月1日 0時) (レス) id: 1ab27b7589 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉さん!私もなんとか乗り越えました。コメントありがとうございます。その願いを胸に物語を書き続けますね! (2021年11月29日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 最終話、なんとか乗り越えました。狐姫さんのお話の煉獄さんと夢主さんは、不滅であることを願っています!! (2021年11月29日 5時) (レス) @page45 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - nkmrさん» nkmrさん、コメントありがとうございます!アニメ版、まもなく最終話ですね。まさに私の物語で描く煉獄さんは、あの優しい雰囲気をイメージして書いているので、それが伝わっていてとても嬉しく、感無量の極みでございます。最終話、一緒に乗り越えましょうね。 (2021年11月28日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年11月15日 18時

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