ペトリコールと猫/shoppi ページ9
ぽたり、と頬に冷たいものが落ちた。灰色の夢の中を彷徨っていた意識が、強制的に覚醒へと導かれる。
ぽた、ぽたり。雨のように雫が落ちる。瞼が震える。ゆっくり目を開けると、彼女がこちらを覗き込んでいるのが見えた。風呂から上がったばかりなのか、部屋着の上から肩にバスタオルを羽織っている。あの冷たい雫は、きちんと乾かされていない髪から零れ落ちたものだったのだろう。
「ん……帰ってたんすか、先輩」
お帰りなさい、と。ソファから身体を起こしながら呟いた言葉にも、先輩はいつものように反応してくれない。ただ虚ろな目付きで俺を見つめて、時計を見て、また俺に視線を戻す。もうすぐ日付けが変わりそうだった。
「……た、」
「はい？」
「……つかれた」
今にも消え入りそうな声でそれだけ言い、先輩はリビングのフローリングにどさりと座り込んでしまった。
あまりにも突然の事で、流石に少し驚いた。取り敢えず、と彼女の腕を引っ張って隣に座らせる。心配になる程小さな肩から、真っ白いバスタオルが滑り落ちた。
「……ごめん、ショッピくん」
「別に。どうしたんですか、今日は」
「ちょっと仕事が……ごちゃごちゃしてて」
彼女の髪から滴る雫に、涙が混ざっているのに気が付く。白い頬を伝うそれを指先で拭ってやると、先輩は小さな声でぽつりぽつりとその"ごちゃごちゃ"の部分を話し始めた。
話している間、先輩はずっと謝っていた。ごめんね、愚痴っちゃってごめんね。迷惑かけてごめんね。待っててくれてありがとう、ごめんね。暫く黙って聞いていると全部吐き出して落ち着いたのか、彼女は泣き疲れた子供のようにうとうとし始めた。昨日もあまり寝ていないのだろう、泣き腫らした目元に隈が出来ている。その痕を指でなぞって、溜息が零れた。
「先輩、明日は？」
「……休み、流石に」
「じゃ、明日は一緒に昼まで寝ましょ。で、どっか先輩の好きなとこ食べに行って、帰ってきたらまた寝れば良いです」
「その後、は？」
「夜はなんか出前取って、風呂入って、寝ます」
「……ダメにんげんだあ」
ふふ、と気が抜けたように笑う先輩の頭に手を置く。良いんですよ、たまには。今のアンタに必要なのは睡眠なんだから。そんなに我慢してまで頑張りたいなら、起きてからまたやれば良いし。こうやって撫でてあげないと寝てくれないなんて、まったく手の掛かる先輩だ。
潤んだ瞳が瞼の下に隠れる。すぐに寝息を立て始めた彼女の肩に頭を寄せて、俺も目を閉じた。
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万代(プロフ) - ミイミイー☆（旧アカ3）さん» 初めまして。嬉しいお言葉、有難う御座います…！リクエストの方ですが、只今私生活が多忙でご期待に沿えるだけのものを書く余裕がないため、今回は見送らせて頂きます。大変申し訳御座いません…更新自体は時々しようと思いますので、お暇な時にでも是非お越し下さい。 (2020年5月22日 22時) (
レス) id: 41e9c26b05 (このIDを非表示/違反報告)
ミイミイー☆（旧アカ3） - 応援してます！これからも更新頑張ってください！（ちなみに私は箱推しのemさんGirlです） (2020年5月22日 18時) (レス) id: 0f788aa618 (このIDを非表示/違反報告)
ミイミイー☆（旧アカ3） - はじめまして！文章の語彙力と表現力が凄い素敵でした！リクエストいいですか？もしよろしければ疲れた夢主を甘く癒やすemさんとか、ロールキャベツ系男子のemさんとかお願いします！出来なかったらすいません… (2020年5月22日 18時) (レス) id: 0f788aa618 (このIDを非表示/違反報告)
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