恋に落ちた３秒後/tntn ページ5
いつもと同じ、素っ気ないチャイムの音が待ちに待った昼休みの訪れを告げた。
クラスメイトの反応はそれぞれだ。空腹に堪え兼ねたように鞄から弁当を取り出す者、友人と連れ立って食堂へ向かう者、教科書を片付けて先に五時間目の準備をする者、或いは何よりも一番にスマホの電源を入れる者。
各々が一時拘束から解放されて自由に動き回る教室の中、いつもの友人達と小さな塊を形成して昼食を取るのも慣れたもの。進級してクラスが変わったとは言え、この辺りのメンバーに目立った変化が無かったのは幸か不幸か。普段通り騒がしい友人達の話を頭の外側だけで聞きながら、空っぽの胃の訴えに急かされるまま弁当箱の蓋を開ける。空腹は最高の調味料とはよく言ったもので、一年前からさほど変化の無い中身でも飽きる事は無い。いただきます。声には出さずに呟いて、箸を手に取った。
冷凍食品用の小さなカップに入ったグラタンをすくいながら、教室の一番後ろで友達と昼を食べている彼女に目をやる。至極楽しそうな笑顔。溜息が、零れた。
まったく、一ヶ月前は「トントンとクラス離れた〜死ぬ〜」などと言いながらこの世の終わりのような顔をしていたのに。切り替えが早い奴だ。
まだ桜の名残が残る四月の初め、昇降口に張り出されたクラス分けの紙の前で項垂れていたあいつを思い出す。たった一年で仲良くなっただけの、別に昔馴染みでもなんでもない人間。それなのにあそこまで落胆するものだから、つい慰める目的で「離れてもこっち来れるやろ、昼休みとか」と言ったのを覚えている。あの時の彼女は嬉しそうな顔をしていたし、結果的にこうしてやって来ている。但し、このクラスにいる彼女の友達と昼飯を食べる為に。
なにが「行って良いの？」だ。結局来ても俺とは殆ど話してないやんか。いや、別に話しに来いとは言っていないが。今ここに来られてもAは知らん奴ばっかりやし、こいつらも彼女だとかなんとかいらん方向に騒ぎ立てるやろうし。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
万代(プロフ) - ミイミイー☆（旧アカ3）さん» 初めまして。嬉しいお言葉、有難う御座います…！リクエストの方ですが、只今私生活が多忙でご期待に沿えるだけのものを書く余裕がないため、今回は見送らせて頂きます。大変申し訳御座いません…更新自体は時々しようと思いますので、お暇な時にでも是非お越し下さい。 (2020年5月22日 22時) (
レス) id: 41e9c26b05 (このIDを非表示/違反報告)
ミイミイー☆（旧アカ3） - 応援してます！これからも更新頑張ってください！（ちなみに私は箱推しのemさんGirlです） (2020年5月22日 18時) (レス) id: 0f788aa618 (このIDを非表示/違反報告)
ミイミイー☆（旧アカ3） - はじめまして！文章の語彙力と表現力が凄い素敵でした！リクエストいいですか？もしよろしければ疲れた夢主を甘く癒やすemさんとか、ロールキャベツ系男子のemさんとかお願いします！出来なかったらすいません… (2020年5月22日 18時) (レス) id: 0f788aa618 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
