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二人で手を繋いで、色んな教室を回った。
お昼ご飯代わりにと焼きそばやはしまきなどのような、いわゆる高校の文化祭のものを食べ、様々な催しを楽しんだ。
ゾンビをイメージしたお化け屋敷だとか、カジノ風のゲーム、名前を聞いたことのある映画の劇や吹奏楽部、ダンス部のステージなど、沢山見て回った。
そして、あっという間に時間はすぎて、Aちゃんが片付けに戻らないといけない時間まで、あと一時間ほどとなった。
俺たちは片手に飲み物を持ち、丁度木の影がかかった、奥まった場所にあるベンチに休憩がてら腰を下ろす。
「いっぱい回ったなぁ〜」
「ですねぇ」
そんなふうに言い合って、お互いにふぅと息をついた。
影になっているから日に当たるよりはマシなものの、九月なのにジリジリと照りつける日差しはやっぱり暑い。
「…暑っ」
「…暑い」
自分の中の暑さを逃がすようにぽつりと零したその言葉と同時に、横から同じ言葉が聞こえてきて、俺たちは顔を見合せる。
少しの沈黙、そして、プハッとどちらからともなく吹き出した。
「ふふふ、ピッタリ重なりましたね」
「な。以心伝心?」
「かもです」
ふふふ、と穏やかに肩を揺らして笑う彼女に、ふと、あることを思い出した。
「…ハッピーアイスクリーム」
「え?」
「ハッピーアイスクリーム。昔、研磨の母ちゃんに教えて貰ったの思い出してさ。知らねぇ? 」
「知らないです。何ですか、それ?」
彼女は不思議そうに、コテンと首を傾げる。
その仕草に、またひとつ胸がキュンと高鳴りながら、
「今みたいに声が揃ったら、ハッピーアイスクリームって言うんだよ。んで、先にそれを言った方が、言われた方にアイス奢ってもらうって遊び」
と言えば、へぇ、と物珍しそうに頷いた。
「んじゃあ、暑いしアイス食いに行こうぜ。Aちゃんの奢りで」
「えぇ、それは卑怯ですよ」
「えー、だって勝ったもん」
ニヤリと口角をあげると、彼女はむぅっと悔しそうな顔を浮かべる。
俺がベンチから立ち上がり、彼女の方を向き直れば、はぁ、と諦めたようにため息をついた。
「…じゃあ、ガリガリ君なら」
「ハーゲンダッツ希望で」
「話聞いてました?」
呆れたようにそう言うのが面白くて、思わず笑えば彼女も頬を緩める。
そして、立ち上がろうとする彼女に手を差し出した時、ふと、俺の背後に目をやった彼女の顔が、げっと言わんばかりに歪んだ。
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るわ - この作品大好きです……!クロかっこよい!更新頑張ってください! (2022年5月22日 22時) (レス) @page36 id: b608b76010 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - kanaさん» ありがとうございます。まだ本格的に再開はできないのですが、もうすぐ更新再開出来ると思います。長い間お待たせしてすみません( .. ) より楽しんで頂けるよう頑張ります! (2021年3月8日 0時) (レス) id: 8a345cf79f (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - おはようございます!このお話大好きです!キュンキュンします(*´-`*)受験頑張ってください!(^^)また更新される日を楽しみに待っています!(*^^*) (2020年7月31日 6時) (レス) id: d202a80bf0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2020年6月5日 18時