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そろそろとゆっくり俺の背中に回された手は、優しく俺に触れた。
彼女はおでこを俺の肩に寄せ、そっと俺に体を預ける。
後ろから抱きしめるよりも正面から抱きしめる方が、ずっと彼女が小さく華奢に感じてしまって。
少しでも力を強めてしまえば壊れてしまいそうな、そんな気がして、緊張で胸がどうにかなってしまいそうだ。
それでも、触れている全てが温かくて、柔らかくて、とても心地が良い。
俺はそれに浸るようにそっと目を閉じた。
何も言葉を発さず、二人でただ抱きしめあって数分が過ぎた頃。
「そういえば、八月か九月の二日くらい、宮城に遊びに行けると思う」
ずっと言おうと思っていたことを思い出してポツリとそう零すと、腕は回したまま、彼女は上半身を少しだけ離してバッと顔を上げた。
俺もそれに釣られて彼女を見下ろせば、大きく見開かれた目と、バッチリ目が合う。
「本当ですか」
「うん。まぁ、まだ部活の予定が出てねーから確定ではないけど」
バイト代もそろそろ貯まるし、と付け足していう俺をじっと見つめたまま、彼女は
「そうですか」
と、嬉しそうに微笑んだ。
俺の腕の中でまるで小さな花の蕾が綻ぶように笑う姿に、彼女を好きだと思う恋しい気持ちとは別の、柔らかくて温かい、大きな何かが俺の胸に広がる。
初めての感覚に戸惑うと同時に、これが愛しいと思う気持ちなのか、とストンと腑に落ちた。
そんな俺の事なんて露知らず、嬉しそうに俺を見つめる彼女に居てもたってもいられなくなって、彼女の頭の後ろに手を回し、さっきよりも強い力で彼女を抱きしめる。
「えっ、あ…先輩？」
「もう…ホント、Aちゃん可愛すぎない？」
「なっ、…何言ってるんですか、ばか」
最初は戸惑いを見せた彼女だったが、俺がそう呟くと、彼女は恥ずかしそうに俺の肩に顔を埋めた。
「その『ばか』っていうのも可愛い」
「…意味分かんないです」
「そうして照れてんのも可愛い」
ギュッと、彼女の手が触れているTシャツが掴まれるのを感じる。
「もうっ、やめてください…はずかしい」
「Aちゃんが可愛すぎるから、やめられないし止まらないンデス」
「…それじゃあ私はかっぱえびせんですね」
彼女がそう言って、力が抜けたようにくすくすと笑いを零した、その時。
ガサッと草を踏む音が俺たちの少し先にある、体育館の角から聞こえてきて、彼女はビクッと肩を震わせると、反射的に背中に回していた手を離した。
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るわ - この作品大好きです……！クロかっこよい！更新頑張ってください！ (2022年5月22日 22時) (
レス) @page36 id: b608b76010 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - kanaさん» ありがとうございます。まだ本格的に再開はできないのですが、もうすぐ更新再開出来ると思います。長い間お待たせしてすみません( .. ) より楽しんで頂けるよう頑張ります！ (2021年3月8日 0時) (レス) id: 8a345cf79f (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - おはようございます！このお話大好きです！キュンキュンします(*´-`*)受験頑張ってください！(^^)また更新される日を楽しみに待っています！(*^^*) (2020年7月31日 6時) (レス) id: d202a80bf0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mifulu | 作成日時：2020年6月5日 18時
