そのごじゅうよん ページ10
.
あの電話から一週間も経たないうちに、私は今年最後の遠征のため、生川高校に来ていた。
これで合宿や遠征は五回目だが、こんなにも気が乗らないのは初めてだ。
私情を挟むのはダメだと分かっているけど、どうしても黒尾先輩に会いたくない。
というか、まだ会えない。
会ったらどうすればいいの、なんて、今日何度目かの問いがぐるぐると頭の中を回る。
バスをよろよろと降りて、日差しに目を細めれば、頭がズキズキと痛んだ。
酔ったのかな、それともストレスかな。
そう頭痛の原因を考えつつ、仁花ちゃんと清子先輩と並んで校内を歩く。
荷物を宿泊場所に置き、必要なものを手に取って、二人から離れてトイレへと向かった。
キリキリと胃が痛くなり、何か今日体調悪いな、なんて思いながら、いつもよりもゆっくり体育館へと足を進める。
すると、
「あ!!! Aさん!!!」
と、一ヶ月ぶりの声が聞こえて、私が振り向くよりも先に後ろからぎゅっと抱きついてくる。
「…久しぶり、リエーフ。相変わらずだね」
力強く抱きしめられ、自分から振り解けないのを分かりきっていた私は、抵抗する気もなくそう呟いた。
腰に腕を回し、こちらを覗いてくるリエーフは嬉しそうに笑う。
「久しぶり!! 会いたかったぁ!」
ニシシシと笑ってから、グリグリと頭を肩に擦り付ける。
…リエーフは大丈夫なんだけどなぁ。
そんなことを思いながら、私はその頭をぽんぽんと軽く叩いて、
「そうだね。ね、そろそろ離して」
と、アピールをするが、リエーフは手を緩めない。
慣れたというか、慣れざるを得なかった近すぎる距離感に、私はひとつため息をつく。
体育館行かないとだしなぁなんて考えて、私は仕方なくそのまま歩いた。
リエーフは半ば引きずられるように、ズリズリと私の後ろを着いてくる。
「ねぇ、リエーフ。そろそろ重いんだけど」
「もうちょっとだけ」
「嫌だ。離して」
リエーフを担げるほど力持ちじゃないの、そう言おうとして振り返ろうとした瞬間、
「何イチャイチャしてるんデスカ、おふたりさん」
と、後ろから声がして私はピタッと足を止める。
全身に緊張が走り、ドキンとひとつ胸がなった。
ついこの間聞いたはずなのに、何故か久しぶりな気がして、私はゆっくり後ろを振り返る。
「おはよ、Aちゃん」
そうニカッと笑った黒尾先輩の目と、私の目がかち合った。
423人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mifulu(プロフ) - 宇宙。さん» ありがとうございます! そう言って頂けてとても嬉しいです! 他のハイキューキャラの小説もいつか作ろうと思っているので、また読んで頂けると嬉しいです(´˘`*) (2020年6月15日 7時) (レス) id: 78d3fcb26b (このIDを非表示/違反報告)
宇宙。(プロフ) - あの!!最高でした!!黒尾先輩がめっちゃ黒尾でした(?)推しの最高な物語読めて嬉しいです、ありがとうございました。もしよろしければツッキーとか影山とか、あかーしとか、書いてくれると嬉しいです! (2020年6月15日 3時) (レス) id: 68b0101532 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 伽音さん» ありがとうございます! そのお言葉で、私もニヤけてしまいます笑 これからも楽しんで貰えるような作品をお届け出来るよう、頑張ります。 (2020年6月4日 22時) (レス) id: 856ce52b7f (このIDを非表示/違反報告)
伽音(プロフ) - 面白くて、ニヤケながら86話を一日で読んでしまいました!良い小説ですね!お疲れ様です!これからも応援してます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: b1d06a9201 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - ルだ子さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます! 楽しんで頂けたようで幸いです(´˘`*) まだ制作中ですので、もう少しお待ち下さい。 (2020年6月1日 21時) (レス) id: 856ce52b7f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mifulu | 作成日時:2020年4月26日 18時