そのはちじゅういち ページ37
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桜の木の蕾が少しずつ膨らみ始めた、今日この頃。
三年間毎日袖を通した制服を身に纏い、左胸にはピンクのリボンで作られた花と、手には卒業証書の入った朱色の本型フォルダー。
涙を浮かべる人も、写真を撮りまくる人も、馬鹿騒ぎする人も様々で。
式が終わって校舎の外、グラウンドと校門に繋がる道で、今日終わりを告げた高校三年間へ思いを馳せる。
俺も決して例外ではなくて。
三年間あっという間だったなぁ、楽しかったなぁなんて友達と言い合いながら、写真を撮ってはしゃいだ。
友達は部活の集まりがあるから、とパラパラいなくなり、体育館へと続く桜並木の通りを一人で歩く。
時々後輩や同級生の女の子に声をかけられては、ボタンを下さいと言われ、少しずつ減っていったが、第二ボタンだけは何となく渡せなかった。
そんな中、何気なく足を止めて空を見上げる。
春高が終わってから、身の回りが少しずつ忙しくなって、なかなか彼女に連絡出来なかった。
っていうのは半分本当だけど、半分嘘。
何度か連絡しようかと思ってトーク画面を開いたものの、お正月で時が止まっている画面に指が動かなくて。
『忙しい』を言い訳にして、彼女から連絡をくれるんじゃないかって、ほんの少し期待した。
まぁ、案の定来なかった訳だけど。
フッと自嘲気味に笑って、はぁとため息をついた。
彼女には俺への気持ちなんてないっていう現実を、全力で叩きつけられて、かなり弱気になっている。
これから、彼女と会うこともほとんど無くなるのだ。
今、これだけ望みがないなら、きっと望みなんて一生来ない。
…何回か、俺の事好きになってくれるんじゃないか、なんて思ったのになぁ。
卒業の気持ちも相まって、何だか寂しくて切ない心とは裏腹に、視界には綺麗な青空が広がっている。
冬と春の中間の、淡い水色の空は広くて綺麗で、吸い込まれてしまいそうだ。
いっそ、この気持ちを全部伝えてしまおうか。
丁度今日、三月十四日は彼女の誕生日だから、夜にお祝いを伝えようかと思っていたところだ。
けど、もう二ヶ月も連絡を取っていない東京の年上からの告白が誕生日プレゼントだなんて、あんまりだろ。
正直、彼女のことをすっきり諦められる気なんてしないが、諦める以外の道はない。
ぐるぐるともう何度考えたか分からない思いを巡らせていれば、
「…そんなとこで何してんの」
と、後ろから聞き慣れた声が聞こえて、俺は振り返った。
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mifulu(プロフ) - 宇宙。さん» ありがとうございます! そう言って頂けてとても嬉しいです! 他のハイキューキャラの小説もいつか作ろうと思っているので、また読んで頂けると嬉しいです(´˘`*) (2020年6月15日 7時) (レス) id: 78d3fcb26b (このIDを非表示/違反報告)
宇宙。(プロフ) - あの!!最高でした!!黒尾先輩がめっちゃ黒尾でした(?)推しの最高な物語読めて嬉しいです、ありがとうございました。もしよろしければツッキーとか影山とか、あかーしとか、書いてくれると嬉しいです! (2020年6月15日 3時) (レス) id: 68b0101532 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 伽音さん» ありがとうございます! そのお言葉で、私もニヤけてしまいます笑 これからも楽しんで貰えるような作品をお届け出来るよう、頑張ります。 (2020年6月4日 22時) (レス) id: 856ce52b7f (このIDを非表示/違反報告)
伽音(プロフ) - 面白くて、ニヤケながら86話を一日で読んでしまいました!良い小説ですね!お疲れ様です!これからも応援してます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: b1d06a9201 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - ルだ子さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます! 楽しんで頂けたようで幸いです(´˘`*) まだ制作中ですので、もう少しお待ち下さい。 (2020年6月1日 21時) (レス) id: 856ce52b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2020年4月26日 18時