huit cafe ページ9
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「話してみろって…」
「別に初恋ってわけでもないし、大人なんだから恥ずかしがるなって」
ほとんど興味本位で、嬉しそうにニコニコするマネージャーをジトリと見る。
そんな俺を見て、マネージャーはさらに楽しそうに笑った。
「で、どんな子?」
「どんな? …んー、上京したばっかりっぽい、あどけなくて可愛い子」
「おお、可愛いんだ?」
「…うん」
「ふ〜ん?」
俺の一言一言に過剰に反応しながら、質問を続けていく。
馬鹿みたいに真面目にその質問に答えている自分にも恥ずかしくなる。
それでも、単純に親しい誰かとこういう話ができるのが、なんとなく嬉しかった。
「芸能人で言ったら誰似?」
「…ピンと来る人はいないかな」
「そうなんだ?」
「沢山、綺麗な女優さんを見てきて、正直その子がそういう人たちに勝るとは思わなかった。けど、」
「けど?」
「…その子の笑顔を見た瞬間、」
「恋に落ちちゃったってわけか」
恥ずかしくてどんどん声が小さくなっていく俺に代わって、マネージャーはそう呟いた。
その優しい声に、恥ずかしい気持ちは変わらないが、どんどん言葉が奥の方から溢れ出てくる。
新婚の人が沢山の日常の話をするのも、こういう気持ちからなんだろうな。
なんて思いつつ、俺は口を開いた。
「…最初は、一目惚れとか信じられなくて。勘違いかな、とも思った。
けど、全細胞が活性化して、全神経が鋭くなったみたいな、あの感じに、なったんだ」
俺が拙く、ゆっくりこぼす言葉に、マネージャーは笑って聞いてくれる。
その笑みは暖かくて、でもどこか寂しそうだった。
「…何さ、その顔」
「いや、何か亮の成長を感じてる」
「意味わかんない。初恋でもないし、むしろ中学生以下だと思うよ、スキルが」
しっとりと真面目に放たれた言葉に、俺が笑いながらそう言えば、マネージャーは
「そういうことじゃないけど…まぁ、幸せになってくれることを願ってるよ」
なんて、余裕のある笑みで言った。
その余裕さが羨ましくって、俺はムッとマネージャー睨んだ。
「何、その突然の上から目線」
「実際俺の方が五つ上だかんね」
そこに反抗しようとしたところで、
「吉沢さーん、準備お願いしまーす!」
と、名前を呼ばれて、俺はマネージャーの元を後にした。
彼女は俺が俳優だということを知らないだろう。
でも、もし何か機会があった時。
彼女が雑誌の俺に惚れるくらい、それくらい頑張ろう。
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mifulu(プロフ) - ほわさん» ご指摘ありがとうございます! バーコードって変ですね笑 これからもよろしくお願いします。 (2019年9月10日 9時) (レス) id: 8875a6e61c (このIDを非表示/違反報告)
ほわ(プロフ) - 誤字とかじゃないんですけど、最新話のバーコードはQRコードにした方が良いと思いますよ!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2019年9月10日 0時) (レス) id: d0efce02c1 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 白うさぎさん» ありがとうございます! ゆっくりになるとは思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2019年7月21日 23時) (レス) id: 477f578196 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - とても面白くて、毎日楽しみにしています!更新頑張って下さい(*^^) (2019年7月21日 17時) (レス) id: 33733f1464 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 華恋さん» 初めまして(*^^*) ありがとうございます! テストが近いのでゆっくりになるとは思いますが、期待に応えられるように頑張ります! (2019年6月30日 10時) (レス) id: 80a048a51f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2019年6月10日 0時