quatorze cafe ページ15
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私が上京してきて、二年が経った頃。
私は、カフェのカウンターに立って、朝からずっと働いていた。
なんてったって、今日は私のバイト最終日なのだ。
私の通っているヘアメイクの大学は、二年制で今月、十二月にはもう卒業準備だ。
あと必要なことといえば、春にある美容師国家試験に合格することだけ。
そんな私は、来月からここら辺でも有名なヘアカットサロンで雇ってもらえることとなったのだ。
ここでは本当に沢山のことが学べた。
特に、この職場の人たちは良い方ばかりで、今日だって、私のわがままでこうやって長い間働かせてもらっている。
勿論、最後までカフェの力になりたいと思う気持ちもある。
でもどこかで、最後にもう一度だけ、あの彼に会いたいという気持ちがきっとあった。
私は洗い物を終え、カウンターを拭こうと真正面にある時計を見た。
時計は、閉店の三十分前を指していた。
…もう、会えないのかな。
きっと、私がここを辞めればもう彼と会うことはないだろう。
私がここへ通えば会えるのかもしれないけど、そんな余裕はきっとない。
私は一つため息をついた。
そして、あることを改めて思い知らせられる。
彼のことは本当に何も知らないのだ。
彼の名前も、年齢も、職業も知らない。
ただ知ってるのは、カフェオレを買いに来ることと少し人見知りっぽいことだけ。
それでも、その情報だけでこんなにも彼について考えを巡らすことに、驚きつつ、再びため息をついた。
もうダメだ、こんな雑念ばっかりじゃ!
まだあと三十分もあるんだし。
それに、今日会えなかったとしたら、それはきっと縁がなかったってこと。
たとえ会えたとしても、もう今日を境に会えなくなるんだから、変わらないじゃない。
そんな風に半ば言い聞かせるようにして、気持ちを奮い起こし、一つ深呼吸をする。
そして、なにごともなかったかのように、カウンターを布巾で拭いた。
まばらに来るお客さんに、ドリンクを作って渡した。
そうして、閉店十分前を指す頃には、もう店内にお客さんはいなくなっていた。
ああ、やっぱり縁がなかったのかな。
広い店内でここにいるのは自分一人。
それが妙に心寂しくて、ただポツンと店の中を見回していた。
すると、
「竹内さん最後までありがとうね。もう上がって、」
と、店長がそこまで言った時、チャリンとベルが鳴ってドアが開いた。
__最後に会えた。
そこに立っていたのは、紛れもなく彼だった。
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mifulu(プロフ) - ほわさん» ご指摘ありがとうございます! バーコードって変ですね笑 これからもよろしくお願いします。 (2019年9月10日 9時) (レス) id: 8875a6e61c (このIDを非表示/違反報告)
ほわ(プロフ) - 誤字とかじゃないんですけど、最新話のバーコードはQRコードにした方が良いと思いますよ!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2019年9月10日 0時) (レス) id: d0efce02c1 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 白うさぎさん» ありがとうございます! ゆっくりになるとは思いますが、楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2019年7月21日 23時) (レス) id: 477f578196 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - とても面白くて、毎日楽しみにしています!更新頑張って下さい(*^^) (2019年7月21日 17時) (レス) id: 33733f1464 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 華恋さん» 初めまして(*^^*) ありがとうございます! テストが近いのでゆっくりになるとは思いますが、期待に応えられるように頑張ります! (2019年6月30日 10時) (レス) id: 80a048a51f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2019年6月10日 0時