そのじゅうはち ページ18
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東京遠征、二日目。
相変わらず暑さは厳しく、熱気溢れる体育館は風通りも悪く最悪の体感温度。
それは夜になっても変わらずで。
今日は仁花ちゃんが音駒の方へ行ってしまったので、潔子先輩と二人きり。
嬉しい反面、黒尾先輩やリエーフのいる、あの魔の巣窟のような場所で仁花ちゃんがやっていけるのか、ものすごく心配だ。
まぁ、こっちも心配だけど。
なんて思いながら、私は、今日何度目かの坂道ダッシュをするみんなを見つめた。
今日も一日、見事に全敗。
掃除やら片付けやらをしていれば、丁度目の前で梟谷のエースさんこと、木兎先輩が月島に絡んでいる。
一日中バレーをしていたはずなのに全力で元気な木兎先輩に、月島はクールにその場を去っていく。
すると、
「ヘイ、烏野マネちゃん! 君はどう〜?」
と、私を見つけるなりそう言った。
「…ドリンクだけ、作っていきますね」
ニッコリと笑ってそう言えば、おー!と言いながら、今度は黒尾先輩の元へと寄っていく。
仁花ちゃんに、今日は先にご飯食べてて!とだけ言って、私は仕事を終えた後、ボトルとコップを取りに荷物置き場へと向かった。
ドリンクがしっかり入ったボトルとコップ、脇にバインダーを挟み、私は昨日通った道を歩いていく。
目的地である第三体育館からもれる光を見ながら近づいていくが、昨日のように靴やボールの音が聞こえない。
…まだ練習始めてないのかな。
そう思ってひょっこりと入り口から覗いてみれば、月島がこちらに背を向けて立っていた。
何やら木兎先輩が話をしている。
何だか熱いその声に、私も思わず耳を傾ける。
「”その瞬間”が有るか、無いかだ」
自分の経験を話した後、そう強く言い切る木兎先輩の言葉に私は、上手くは見えない木兎先輩をじっと見つめ、彼の言葉をひとつも聞き漏らすまいと彼の声を追う。
「それがお前がバレーにハマる瞬間だ」
その言葉が妙に私の心に刺さった。
チラリと月島を見てもこちらから表情は見えないが、その背中から、心が揺れたのが分かった。
私はその背中をじっと見つめる。
すると、
「あ、Aちゃんじゃん。今日も来てくれたんだ?」
と、月島の影からひょっこりと黒尾先輩が顔を出した。
「あ、はい」
「よし。ハイ、質問答えたからブロック跳んでね」
そう言って連れていかれる月島。
その顔は満更でも無さそうで。
私は嬉しくて、つい体育館の中に入る。
「あの…ボール出ししましょうか?」
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mifulu(プロフ) - るさん» コメントありがとうございます! そう言っていただけて嬉しいです。 (2020年4月18日 12時) (レス) id: ab7a8cd136 (このIDを非表示/違反報告)
mifulu(プロフ) - 星猫さん» コメントありがとうございます! ここではなんですので、良かったらボードなどで話しかけて下さると嬉しいです。 (2020年4月18日 12時) (レス) id: ab7a8cd136 (このIDを非表示/違反報告)
る - すごく面白いです、早く続きが読みたくなります (2020年4月18日 9時) (レス) id: 3219097ab0 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか? (2020年4月13日 18時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mifulu | 作成日時:2020年4月6日 20時