( 満月の夜は、目眩のするような甘いキスを。4 )

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私の頰にぴったりとくっついていた大倉くんの左手が私の右手を確かめて、握る。ゆっくりと。


スローモーションみたいにゆっくりにも、早送りみたいに一瞬の出来事のようにも、感じられた。


私の手を握った大倉くんは決して乱暴ではないけれど、逆らえない力で私を自分のほうに一歩引き寄せて。右手はずっと私の左の頬を包んでいた。



身体をかがませた大倉くんの目が、わずかに虚ろに見えて、私は呼吸をする暇も目を閉じる余裕もないまま。



私たちはキスをした。



すこし息が苦しくなるくらい、それくらいの間、大倉くんの唇は私の唇を塞いでいて、

それからすこし離れようとする気配に無意識に酸素を求めたら、まるでそうはさせまいと言うみたいに、私の右の頬におおきな手が戻ってきてもう一度、顔の角度を変えて塞がれる。



やさしいのか、強引なのか。

理性的なのか、野生的なのか。

なんにも、よくわからなくなった私は、ただそのやわらかな熱にすべてを支配されているみたいで。いつの間にか目を閉じていたのに、目が眩むような感覚に襲われる。




もう、離れられないと思ったし、離れたくないと思った。




刹那に永遠にも感じられたキスが終わって、大倉くんの唇が離れていくと、息切れをしていた私はまずおおきく息を何度か吸って吐く。


大倉くんを見上げると、余裕そうな笑みを浮かべていた。

月からのまばゆい光が大倉くんの髪の毛を茶色く透けさせる。



それが綺麗で、たまらなくなって、また涙が出てきてしまいそうで、


私は背伸びをして大倉くんの唇を奪いにいく。すこしばかり、さっきの仕返しも兼ねて。

両手を彼の肩に置くと私は容易に大倉くんの唇に到達できた。




おそらく私たちはどちらもちょっと興奮していたんだと思う。




しばらく言葉もないままにキスに酔いしれていたし、大倉くんは私からの口付けが終わると今度は、おおきな身体に私を閉じ込めて強い力で抱擁を繰り返した。


前に一度、落ち込んだ私を慰めるために抱きしめてくれた時より、ずっと。ずっとずっと。まったく別物くらい甘い抱擁だった。








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