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視界が滲んでゆらゆらと揺れる。
これ以上はもう、寄せようがないくらい、小刻みに震えながら眉間にしわを寄せていた。そうしないと、なんだかすべてがばらばらになってどこかへ飛んでいってしまいそうだった。
「Aちゃん。」
大倉くんの声が私の名前を呼ぶ。
私はもう、涙を拭うことすらできずに俯いてただ顔を歪ませ泣いていて。大倉くんのやさしい声だけが滲んだ世界に浮き彫りになる。
「なあ。ちゃんと、教えて。……Aちゃんは、どうしたい？ほんまはどうしたかった？」
下睫毛にふくらんだ涙が落ちた。
言えるはず。
どうしたいか、言えるはず。
それでも、それを言ってしまうとどうなるのか、その後に起こるであろう良いことと悪いことといろんな気持ちが絡まって、どうしても口を開くことができない。
「Aちゃん。」
もう一度大倉くんが私の名前を呼んだ。
さっきよりすこし強い、けれど宥めるような、励ますようなそんな声。
涙ですっかりつめたくなった両頬を大倉くんの手のひらが包んで持ち上げた。大倉くんの手は大きくて、私の顔はほとんど包まれているようだった。
私はすっかり子供に戻ったように、泣きながら大倉くんを見上げる。
「もう、いいんやで。そんなに、正しくいようとせんでも。誰ひとり傷つけんと生きることなんてできひんし、傷つくだけの人生やって、絶対ないんやから。」
何もかも見透かしたような瞳でこちらを見つめて、私を安心しきらせてしまうようなやさしい表情をする大倉くんに私はようやく、なにもかも本当に大丈夫になったように思えた。
そう思えた途端に、私はもうちっとも心細くないような気がする。
滲んだ視界に揺れていた大倉くんの顔の輪郭がはっきりとして、彼の手はまだずっと私の頬を包んだままで、私には大倉くんしか見えなくて。
すこし急かすこともなく、ただ手の温もりとやわらかな眼差しで私を待ってくれている。
だから、私の頬を包む大倉くんの手の上に自分の右手をそっと重ねた。
その手は確かに男のひとのもので、おおきくてすこし乾いているけれど、だけどとてもやさしい。
「大倉くんが好き。」
すこしだけ震えた私の声の粒が夜の空気にひそかに、そしてはっきりと浮かび上がった。
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蒼 夢見子(プロフ) - らてさん» らて様、初めまして。そう言っていただけてとてもうれしいです…！ありがとうございます！以前に比べると書くスピードが遅く滞りがちですが新しいものも完結できるよう頑張ります…！！ (2021年2月8日 20時) (
レス) id: 3ff9e3c936 (このIDを非表示/違反報告)
らて(プロフ) - はじめまして。蒼 夢見子さんの書く文章、表現、言い回し、描写がとても好きです！素敵なお話をありがとうございました。新作も楽しみにしております！ (2021年1月26日 13時) (レス) id: d5862e85a0 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、読み返していただけるなんてありがたすぎます…！ありがとうございます（涙）たいしたものではないのですがすこしずつ書き留めていてきちんと清書できたら公開しようかなと思っています。いつになるかわかりませんが気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2019年4月9日 20時) (レス) id: 5ab3a36ba5 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - 久しぶりにキュンキュンしたくて読み返しました。何度読んでも素敵です！続きが下書き中になっていたのですがまだ続きがあるんですか？もしあるのならばすごく楽しみです(≧∇≦) (2019年4月9日 18時) (レス) id: 8a01f69d5a (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - ちいさん» ちい様、きゅんきゅんしていただけてとっても嬉しいです…！いつになるかはわかりませんが、私も是非またふたりを描けたらいいなと思っているのでその時には読んでいただけるとありがたいです^^ (2019年2月4日 19時) (レス) id: 0c7f8e1b68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2019年1月5日 23時
