＊ ページ23
＊
月明かりは屋上を明るく照らす。まんまるの、おおきな月。調べてみたら、今日は満月だった。
地面に腰を下ろしてゆるく、膝を抱えて座り空を仰ぐ。
ちかちかと点滅をしながら動くちいさな光りが見えた。飛行機。あの空の彼方のほうにおおきな機体に乗ったたくさんの人間がいるのかと思うと、なんて自分はちっぽけなのだろうと思った。
結局私は、また、孤独に戻ってしまった。
ぽつねんと、ひとりぼっちで、屋上で空を眺める日々に戻ってしまった。
だけどそれでもいいと思う。
別にまだ、終わりじゃない。人生は気が遠くなるほどまだ続いていくのだから。例外に、もし明日不慮の事故で帰れなくなったとしても、まあ、それはそれでいいかもしれない。
私は今の選択をひとつも間違いだとは思っていないのだから。
――……ごめんね。私、安田くんの気持ちには、応えられない。
――…うん。わかった。考えてくれて、ありがとうな。
ようやく口にした私の言葉に安田くんはとても、とても、あたたかい、すべてを包み込むみたいな笑顔を私に見せた。
昼間のこと。まだ胸は苦しいまま。
結局、私は今この時も大倉くんが好きで、それ以上でも以下でもない。
一週間以上も、よく考えて昨日の夜まではまだ迷っていた。久美ちゃんの問いに動揺しながらも、けれど安田くんのことを好きになりたいという気持ちは変わっていなかった。
そして、大倉くんの後ろ姿を見た。
私はそこで。なんらかの作用が働いて、フェードアウトしていく様に、又は突如に終わるかもしれないけれど、その日まで私はこの恋を終わらせることはやっぱり、無理だと悟った。
歩けなくなってしまうほどに大倉くんが好きで、どうしようもなかった。
世界にはいろんな恋のかたちがあって、心の片隅に本当に好きなひとを忘れられずにいながら、自分を愛してくれる心優しいひとのそばにいるというひともきっとたくさんいるはずで。
それだって、素晴らしい。素晴らしいことだと思う。
だけど、愚かな考え方かもしれないけれど、私はもうこれ以上、自分のことを嫌にはなりたくなかった。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1227人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼 夢見子(プロフ) - らてさん» らて様、初めまして。そう言っていただけてとてもうれしいです…！ありがとうございます！以前に比べると書くスピードが遅く滞りがちですが新しいものも完結できるよう頑張ります…！！ (2021年2月8日 20時) (
レス) id: 3ff9e3c936 (このIDを非表示/違反報告)
らて(プロフ) - はじめまして。蒼 夢見子さんの書く文章、表現、言い回し、描写がとても好きです！素敵なお話をありがとうございました。新作も楽しみにしております！ (2021年1月26日 13時) (レス) id: d5862e85a0 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、読み返していただけるなんてありがたすぎます…！ありがとうございます（涙）たいしたものではないのですがすこしずつ書き留めていてきちんと清書できたら公開しようかなと思っています。いつになるかわかりませんが気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2019年4月9日 20時) (レス) id: 5ab3a36ba5 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - 久しぶりにキュンキュンしたくて読み返しました。何度読んでも素敵です！続きが下書き中になっていたのですがまだ続きがあるんですか？もしあるのならばすごく楽しみです(≧∇≦) (2019年4月9日 18時) (レス) id: 8a01f69d5a (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - ちいさん» ちい様、きゅんきゅんしていただけてとっても嬉しいです…！いつになるかはわかりませんが、私も是非またふたりを描けたらいいなと思っているのでその時には読んでいただけるとありがたいです^^ (2019年2月4日 19時) (レス) id: 0c7f8e1b68 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2019年1月5日 23時
