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「どうして、迷ってるんですか？」
目の前の久美ちゃんは静かな表情で私を見ていた。
私は、グラスに伸ばしかけた手を止める。
久美ちゃんに、安田くんのことを話した。何かを深く考えて話したわけでもないけれど、浅はかに話したわけでもない。
久美ちゃんの反応から何か答えを得ようと思ったのではなく、ただ、話したのだ。
安田くんに告白されて、返事はまだしていない。それだけを。
そうしたら、久美ちゃんはすこし黙った後に私にそう訊いた。予想外だった。
私は答えに戸惑って、ただ久美ちゃんの睫毛が綺麗に生えそろっていて、はっきりした二重の瞳を見返す。
今日は火曜日で、久美ちゃんは会社に戻ってきたのだけれど、やはりまだ本調子がでないのか仕事中も眠たそうだったし、今もほんのすこしそう見える。
「好きなひとがいるからですか？」
久美ちゃんは何も答えられない私にさらにそう訊いて、だけど、ふと我にかえったように、目を見開いた。
「あ…違うんです。すこしだけ、疑問に思っちゃって。そんなこと、私が訊くことじゃないですよね。」
そう言ってぎこちなく笑って、お箸を持った手をふたたび動かしはじめる。
どうして、迷ってるのか。
私は結局一言も何も発することができずに、「あ、そうだ。」という久美ちゃんの声に顔を上げた。
「私、今週の日曜日、大倉さんと出かける約束したんです。水族館に行くことになってて。」
秘密の話をするような声。
久美ちゃんは眉毛をさげて微笑む。
「その時、言おうと思ってます。良い返事、あんまり期待したくはないんですけど、水族館に一緒に行ってくれるってそれだけで舞い上がりそうで怖いんですよね。」
私は、水族館の青を思い出した。
暗闇に浮かんだ青色の水槽とその水槽の中で青く泳ぐ魚たちと、青い光の粒。
職場もボーリングも焼肉も、それから屋上も私は知っているけれど、水族館にいる大倉くんを私はまだ知らない。想像もつかない。
「そっか…。いい返事、もらえること祈ってるね。」
私は自然に微笑むことができた。なんの抵抗もなく、ちゃんとやさしい心になれた。
私は考えているんではなくて、迷っているんだろうか？
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蒼 夢見子(プロフ) - らてさん» らて様、初めまして。そう言っていただけてとてもうれしいです…！ありがとうございます！以前に比べると書くスピードが遅く滞りがちですが新しいものも完結できるよう頑張ります…！！ (2021年2月8日 20時) (
レス) id: 3ff9e3c936 (このIDを非表示/違反報告)
らて(プロフ) - はじめまして。蒼 夢見子さんの書く文章、表現、言い回し、描写がとても好きです！素敵なお話をありがとうございました。新作も楽しみにしております！ (2021年1月26日 13時) (レス) id: d5862e85a0 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、読み返していただけるなんてありがたすぎます…！ありがとうございます（涙）たいしたものではないのですがすこしずつ書き留めていてきちんと清書できたら公開しようかなと思っています。いつになるかわかりませんが気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2019年4月9日 20時) (レス) id: 5ab3a36ba5 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - 久しぶりにキュンキュンしたくて読み返しました。何度読んでも素敵です！続きが下書き中になっていたのですがまだ続きがあるんですか？もしあるのならばすごく楽しみです(≧∇≦) (2019年4月9日 18時) (レス) id: 8a01f69d5a (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - ちいさん» ちい様、きゅんきゅんしていただけてとっても嬉しいです…！いつになるかはわかりませんが、私も是非またふたりを描けたらいいなと思っているのでその時には読んでいただけるとありがたいです^^ (2019年2月4日 19時) (レス) id: 0c7f8e1b68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2019年1月5日 23時
