「導く月」 ページ19
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土曜日と日曜日は快晴で、けれど私は家の外にあまり出なかった。日曜日に、ボトルの醤油とキッチンペーパーを買いに、夕方家から二番目に近いスーパーへ行っただけ。
後はずっと、ほとんど、家の中で何もせずに窓から差し込む太陽の光と、その光が落ちて暗くなるまでを見届けたりして。
そうして、私は考えた。
いままでのいくつもの分岐点。いくつもの選択。
そのたびに私はよく、いろんなことを思い出してきたのだけれど。
例えばぱっとしない幼少期や、ぼうっと生きていた高校生、自由だった大学時代。
それから、孤独に飲まれ泳げなくなってしまった社会人になってからの時間なんかを。
膨大な時間のいろんなことに思いを馳せてそして結局私は辿り着く。大倉くんに出会ったことと、安田くんのキスに。
生きてきてこれまで、私は大倉くんほどに不躾で身勝手なひとを見たことがなかったし、安田くんほどにあたたかくて慈しみ深く、私を健やかにしてくれるひとと出会ったことはなかった。
安田くんのキスは、これ以上にないくらいにやさしかった。
――…いいんちゃう？Aちゃんがしあわせんなれるんやったら。
私はずっと、自分をしあわせにするための選択をしていたのかは、考えたけれどよくわからないまま。
月曜日。
月曜日も晴れていた。
久美ちゃんは風邪で会社を休んでいたから、ひとりで昼食をとる。安田くんは営業で忙しそうで、大倉くんとは二回だけ目が合ってそのうちの一回はそっけなく目をそらされた。
久美ちゃんはいつ、大倉くんに彼女の想いを打ち明けるのだろう。
そんなこと、私が気にすることではないけれど、何度かそう考えてしまう。
もし。
もしも、私が安田くんと付き合うことになって、大倉くんも久美ちゃんと付き合うことになったら、
いつか私が言った『お互いしあわせになれるといい』なんていう祈りにも似た願いは叶うんだろうか。
そうだといい。と私は思う。
私はその頃にはもう、大倉くんが好きだったころの自分を思い出してなんだかすこし恥ずかしくなってしまうだろうし、安田くんのやさしいキスが当たり前のようになっているかもしれない。
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蒼 夢見子(プロフ) - らてさん» らて様、初めまして。そう言っていただけてとてもうれしいです…！ありがとうございます！以前に比べると書くスピードが遅く滞りがちですが新しいものも完結できるよう頑張ります…！！ (2021年2月8日 20時) (
レス) id: 3ff9e3c936 (このIDを非表示/違反報告)
らて(プロフ) - はじめまして。蒼 夢見子さんの書く文章、表現、言い回し、描写がとても好きです！素敵なお話をありがとうございました。新作も楽しみにしております！ (2021年1月26日 13時) (レス) id: d5862e85a0 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - まゆ☆まゆさん» まゆ☆まゆ様、読み返していただけるなんてありがたすぎます…！ありがとうございます（涙）たいしたものではないのですがすこしずつ書き留めていてきちんと清書できたら公開しようかなと思っています。いつになるかわかりませんが気長にお待ちいただけると嬉しいです！ (2019年4月9日 20時) (レス) id: 5ab3a36ba5 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ☆まゆ(プロフ) - 久しぶりにキュンキュンしたくて読み返しました。何度読んでも素敵です！続きが下書き中になっていたのですがまだ続きがあるんですか？もしあるのならばすごく楽しみです(≧∇≦) (2019年4月9日 18時) (レス) id: 8a01f69d5a (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - ちいさん» ちい様、きゅんきゅんしていただけてとっても嬉しいです…！いつになるかはわかりませんが、私も是非またふたりを描けたらいいなと思っているのでその時には読んでいただけるとありがたいです^^ (2019年2月4日 19時) (レス) id: 0c7f8e1b68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2019年1月5日 23時
