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「Aと飯食うん久しぶりやな。」
唐揚げを頬張る亮は嬉しそうだった。亮って、ちいさな柴犬に似ている。寂しがりやで人見知りの柴犬。
「亜紗美ちゃんとホーリーは元気?」
意識的に、そう訊いた。ふとした時に忘れるなんてことは絶対ないけれど、亮が結婚をしているということを自分に言い聞かせるみたいに。
「おん。ホーリー、Aんちから帰ってきてしばらくAのこと探しとったで。」
「ほんと?可愛いなあ、ホーリー。」
愛らしいホーリーを思い出して、お味噌汁をすすりながら思わずにっこりしてしまう。
「…そんで、転職ってなんでまた急に?」
亮は次の唐揚げをお箸で刺して――亮は食事のとり方もまるで子供のようなところがある。カレーをぐちゃぐちゃに混ぜたり、食べ物をお箸で刺したり。――私を見た。
あたたかいお味噌汁が体の中に流れていくのを感じてから、「ええっとね」と私はおおまかに転職しようという決意に至るまでを亮に話すと、亮は難しそうな顔で私の話を聞き、大倉くんの名前を出すと目を丸くした。
「…大倉が?」
よっぽど私の口から大倉くんの名前が出てきたことに驚いているのか食事する手を完全に止めている。
「うん。大倉くんの会社、求人してるから今のとこ辞めて受けてみたらどうかって。」
私はほうれん草の和え物をすこしばかりつまみ、口の中にいれる。
「それでさっき、面接してきたの。でも採用してもらえるかはわからないから他にも職探しはしてる。」
わかってはいたけれど、退職の話をするのはかなり大変だった。
主任からは無責任だとか社会性がないだとかいろいろ言われたけどじっと耐えて、最終的に上まで話を持っていくのに二週間はかかってしまった。
私が退職するとみんなが知ってから当然の如く、職場の空気は悪いし、辞められるものならすぐに辞めたいけれど、引き継ぎに最低でも二ヶ月はかかる。
最短でも今年いっぱいで退職するのが限界だった。
そこだけ、すぐに人手が欲しい大倉くんの会社のニーズと合わないから採用してもらえなかった時のことを考えて、隙間時間を見つけては他の転職先も探している。
「…そうなんや。大変やったな。そういうん、すこしは俺にも相談しろや。」
亮は口の中でもごもごと舌を動かす素ぶりを見せた。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時