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「満たされない若者たち」 ページ17







彼との別れ話は、可笑しくなってしまうほど淡白に終わった。

彼は私に他に好きなひとがいるとも浮気をしてるとも言わなかったし、私も浮気現場を見たとは言わなかった。


彼は眉毛を下げながらただ「これ以上付き合っていてもお互い何も得るものがない」と、そう言った。

駄々をこねるつもりは全くなかったし、私も別れるつもりで来たのだからなるべく話をこじらせたくなくて「そうだね」と頷くと私たちの別れは成立した。とても、あっさりと。



「来月、引っ越そうと思ってるんだけど俺の部屋にあるAのもの、どうすればいい?」


別れ際そう聞いてきた彼に私は嫉妬に似たような感情を覚える。

新しい彼女と同棲でもするんだろうか。

私と別れても彼には帰る場所があるし、寄り添えるひとがいる。いいな、ずるいって子供じみた不満を心の中で呟いた。


「捨ててもらってもいい?」


何を彼の家に置きっぱなしにしてあったか思い出しもせずそう言った。


「わかった。俺のは、取りにいってもいい?」


「うん。まとめとく。」


そうやって、頼んだコーヒーがまだ半分もなくならないうちに話は終わって私と彼は別れた。

彼はずっと困ったような顔をしていたし、当然のことだけれどこの間一緒に歩いてた女のひとに見せていたような笑顔はすこしも私に見せてくれなかった。


孤独はまた、深くなる。


帰り道、夕方でも暑さが残る街を歩きながら私はまた、なにかいいことないかなって無意識に考えてしまうのだ。



こんなときにも不意に亮とふたりで歩いたバイト帰りの道なんかを思い出す。性懲りもなく。


そんなに、情熱的に好きだったわけじゃない。


ただ、不器用すぎるばっかりに誤解されやすくてそれを気に病んでるところとか、口は悪いけど人一倍情が厚くて寂しがりやなところとか、目を伏せた時に睫毛が長くてとても儚くて綺麗なところとか、そういうとこをふとした時に好きだなって思うくらい。


それなのに亮が付き合ってきた彼女たちとつまらないことで喧嘩をするたびに、私だったら亮の悪い癖も、嫌いな食べ物も、全部知ってるのになって、そう思った。


だけど皮肉なことにも、亮がそうやって自分のすべてを曝け出してくれるのは、私が『信頼できる友達』だからで。



私はずっと、亮が好きな女の子の前だけでするみたいに、私の前で虚勢を張って完璧を演じてくれる日を夢見てた。馬鹿みたいに。








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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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