Quoi que vuos【時透無一郎】３rd

エピローグ〜未来の話〜1st ページ24

「いやぁ今回のコンクールは実力者揃いでしたね」



会議室で審査員の一人が嬉しそうに話し出した。



「貴方の教え子も参加していたんでしょう？」



「はい。やっと全国コンクールに出せた。
私の夢が叶いましたよ」



「確か、教え子から全国コンクールで優勝させるのが夢なんでしたっけ？」



「しかし流石、元々は将来を期待されたピアニストというべきか……
貴方の教え子は素晴らしかったですよ」



「雨霧さん」



名前を呼ばれたAは誇らしそうに微笑んだ。



貴「自慢の生徒なので」



「貴方も手が使えていれば、世界で活躍するピアニストに……
あ、すみません…」



貴「いえ、良いんですよ。
もう吹っ切れていますし、私の昔の夢は私の生徒が必ず叶えてくれるので」



「はは、随分教え子に自信があるんですね。
それとも今の旦那様のお陰ですか？」



貴「んー…まあ、今こうして居られるのは旦那のお陰でもありますね」



Aは左手の薬指を愛おしそうに頬を染めて見つめた。



貴「では私はそろそろ時間なので……」



Aは静かに席を立った。



「あ、ドア開けますね」



貴「ありがとうございます」



では、と会釈をしてAは会議室を出て行った。



「お幸せそうですね〜…」



年上の審査員達が微笑ましくAが出て行ったドアの向こうを見つめていた。

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