34.人は報われない ページ36
*
───────いつだって世界は理不尽だ。
罪なき命が無様に失われていく瞬間を、今まで何度も見てきた。
『善良な人間はいつか報われる』
そんな言葉は嘘だ。
そんなことが言えるのは、今まで悲しみと憎しみと後悔に塗れた人生規模の挫折を味わったことがない人だけ。
どんなに善良に生きたって、
どんなに努力し続けたって、
幸せになれるか不幸になるかなんて、どうせ運なんだから。
人は報われることなんてない。
生きるか死ぬか。
これは自分で選ぶことでも何でもない。
ただ、自分の人生のうちに運に過ぎない。
───────……そう、この、僅かな幸せが手のひらから零れていく瞬間さえ
「れん、ごく、さ……」
夜明けが近づき、猗窩座は自らの腕を引きちぎって逃亡し、残ったのは滑稽な鬼殺隊員五人。
炭治郎くんがなにか叫んでいるけれど、それさえも聞こえず目に映るのは血を流して地面に静かに座り込む煉獄さん。
フラフラと、もつれそうな足を動かして煉獄さんの傍に行く。
「……血、血が……」
猗窩座の腕が貫通していた鳩尾からドロドロと血が流れ出ている。
───────止血できない。
その血を見た時、すぐにわかった。
「……すまない。手遅れだ」
煉獄さんは、ただ一言そう言った。
その『手遅れ』が、私に向けての恨み言でも戯言でもないはずなのに、煉獄さんがそんなことを言う人じゃないこともわかってるのに、その『手遅れ』をどうしようもない私に重ねてしまって。
そして煉獄さんは先程まで猗窩座に怒号を喰らわせていた炭治郎くんを見て「もういい」と言った。
「腹の傷が開く。君も軽傷じゃないんだ。おいで。少し話をしよう」
炭治郎くんは悔しそうに唇を噛みながらも大人しく煉獄さんの前にすわった。
煉獄さんは炭治郎くんから聞かれていたことがあるようで、そのことについて話していた。
私はもう、まもなく死ぬ彼の体に最後の温もりを与えることしかできなくて、ただ背中に一つの手を回していた。
「竈門少年。俺は君の妹を信じる。鬼殺隊の一員として認める。列車の中であの子が、血を流しながら乗客を守っているのを見た。命を懸けて人を守り鬼と戦う者は誰が何と言おうと鬼殺隊の一因だ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 414人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鮭大根大好き - 我妻レイさん» 半天狗の玉壺，，，上弦の壱弐参と並べたら，，，はい笑← (2020年11月12日 20時) (
レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(サブ垢)(プロフ) - 我妻レイさん» ありがとうございます。更新がんばりまっす！ (2020年11月3日 10時) (レス) id: 4ec626281e (このIDを非表示/違反報告)
我妻レイ - 確かに笑敵枠としては重要キャラかもしれませんなぁ…！！絶対伍はもう外見がいかにも敵です！っていうキモさだもんなぁ(失礼)はは…更新ファイトです！ (2020年11月2日 21時) (レス) id: 652a598782 (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - 我妻レイさん» 肆と伍は過去も同情できるようなキャラではないですからね……。でもあの歪んだ性根は敵枠としては好きですw 推しにはできませんが……() (2020年11月2日 12時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
我妻レイ - 鬼滅の刃って嫌いな人が少ないんですよね…みんな嫌いになれないっていうか…あ、ただし上弦の肆上弦の伍お前らはダメだ。 ……はい！、更新頑張ってください(*^^*) (2020年11月1日 23時) (レス) id: 652a598782 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：昆布の神
x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2020年10月25日 22時
