真珠の如く消えてしまえばいいのに。【鬼滅の刃】

16.禰豆子 ページ18

なかなか箱から出てこない鬼に苛立ったのか、箱の取っ手に刀を引っ掛けて無理矢理開けると、鬼の女の子がフラフラと姿を現した。

不死川さんの血を睨みながら、涎を垂らしつつ何とか理性を保とうとしている。


この睨み合いは果たしていつまで続くだろうか。


「伊黒さん、強く抑えすぎです。少し緩めてください」

「動こうとするから抑えているだけだが？」


伊黒さんとしのぶさんの会話が聞こえてくる。
相変わらず少年は抗おうとしているのか。


「……竈門くん。肺を圧迫されている状態で呼吸を使うと血管が破裂しますよ」


「血管が破裂！？良いなぁ響き派手で！！よしいけ！破裂しろ！」


「可哀想に……なんと弱く哀れな子供……南無阿弥陀仏……」


チラッと少年の方を見てみると、少年が呼吸を使おうとしていた。


「竈門くん……！？」


少年は自力で腕を拘束している縄をひきちぎる。伊黒さんの腕は冨岡さんによって離され、少年は屋敷の縁側まで走る。


「禰豆子！！」


少年に名前を呼ばれた鬼は、唸り声をあげたあとにプイッと不死川さんの腕から顔を逸らした。


(……噛まなかった)


「……どうしたのかな」


「鬼の女の子はそっぽ向きました。
不死川様に三度刺されていましたが、目の前に血塗れの腕を突き出されても我慢して噛まなかったです」


「ではこれで禰豆子が人を襲わないことの証明ができたね」


お館様がそう言ったあと、ようやく冨岡さんが伊黒さんの手を離した。


「……何のつもりだ、冨岡」


そして無言の冨岡さん。
……なにか喋りましょう。

お館様が口を開く。


「炭治郎。それでもまだ禰豆子のことを快く思わない者もいるだろう。
証明しなければならない。これから。
炭治郎と禰豆子が鬼殺隊として戦えること、役に立てること……。十二鬼月を倒しておいで。そしたら皆んなに認められる。炭治郎の言葉の重みが変わってくる」


ハッと少年は顔を上げる。
そして決意を顔に表し高々と宣言した。


「俺は……俺と禰豆子は鬼舞辻無惨を倒します。
俺と禰豆子が必ず、悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう！！」


お館様はにっこり微笑んで「今の炭治郎にはできないから、まず十二鬼月を一人倒そうね」と優しく告げた。


みるみるうちに少年の顔が赤くなっていく。
……やばい。口元が震える。

17.隠→←15.鬼殺隊の想い

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す