40.君のせいだよ ページ42
「うわ、寒」
部活帰りに一緒に帰るために待ち合わせをして、それから外に出ると北風が吹いていた。
角名君は顔を顰めてマフラーに顔を埋める。
「一月やもん……。寒くない一月があったらええのに」
「それはそれで気色悪い」
「確かに」
歩き出すと鈴の音が鳴る。
一つになってしまったお守りは通学カバンにつけることにしたのだ。
そうしていたら、幸せな人生を歩めるような気がして。
「……」
息を吐くと、それは白い気体になって消えた。
冬だなぁ、って思ったらますます寒くなってくる。
「……ねえ」
「ん？」
左隣を歩く角名君に自分の左手を差し出す。
冬は、大好きな人の温もりが愛おしくなるものだ。
「……ワガママできるようになったじゃん」
角名君の大きい手が私の手を包み込む。
絡められた指先は、本来なら一番冷えやすい部位のはずなのに妙に熱い。
「ねえ、俺もワガママ言っていい？」
「ええよ」
「名前で呼んで」
そう言ったのと同時に角名君が立ち止まった。
繋がれた手はしっかりと握られていて、察してしまった。
これ、呼ばないと解放されないやつだと。
私は背伸びをして、より君に私の声が届くように口を近づけた。
「倫太郎」
「っあー、ヤバい」
「耳まで真っ赤ですよー」
「うるさい」
背伸びをやめて、意外と照れ屋さんなんだなぁと思いながら倫太郎を見上げてニヤニヤとしていると不意に倫太郎の顔が近付いてきて、額にキスされた。
「……」
「これでおあいこ、ブーメラン」
「んなっ……」
冬なのに、体が熱い。
誰かが隣にいてくれるだけで、こんなにも温かいものなんだ。
「なんやねん、こんな道端で……。……好きだよ」
「ツンデレ？ ……俺もだよ」
音楽が大好き。オーボエが大好き。倫太郎が大好き。
ねえ、星哉。私にたくさんの大好きをありがとう。
死ぬ未来を想定して尚、私を想ってくれてありがとう。
この世界には星の数ほど人がいて、それでも人生に恵まれない人もまた星の数ほどいる。
自分の不幸を誰かのせいにできたならどれほど楽だろう。
それでも、体に意志と宿命がある限り、私は生きたい。
でもね、こんなにもたくさんの大好きを与えられて、倫太郎と絶対に離れたくないと思うほどの愛を持ってしまったのは、それは、星哉。
君のせいだよ。
❦ℯꫛᎴ❧
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昆布の神(プロフ) - ルナさん» 修正致しました。ご指摘ありがとうございました。 (2021年11月17日 15時) (
レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - あの、37話の星裁のお母さんが「まあ、神社みたいな感じかな」と言っている場面があるんですけど、”感じ„が“漢字„になっていましたよ！ (2021年11月17日 0時) (レス) @page39 id: d2a92b36ce (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 虹四葉さん» コメありですー！ 角名君いいよね……最高すぎる……。 (2021年3月31日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
虹四葉(プロフ) - もう神作よ…角名くんの言動が何もかも尊く見えるんだが…… (2021年3月31日 21時) (レス) id: 550a2fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 星猫さん» コメありです！ 合作！？ 是非ともお受けしたいです！ お誘いありがとうございます！ (2021年3月21日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2021年3月8日 23時
