35.想い出 ページ37
「A、帰らんの?」
兵庫に戻ってミーティングも終えたあと、皆んなが帰り出そうとする中で唯一逆方向に向かう私に舞奈が声をかけてきた。
「あー……。明日、学校休みやん? だから久しぶりに実家帰ろうと思って」
「そういえばAって大阪出身か。わかったわ。じゃあまた部活で」
手を振って別れ、私は一年半ぶりの実家へと向かった。
親には全国大会が終わったら一度帰ると連絡を入れておいたから大丈夫。
家に着くと隣には星哉の家がある。
でも、もう夜だから訪問するのは明日。
「ただいま」
「A!!」
『ただいま』と言った瞬間にリビングから玄関へと飛んでくる母。この人、ついに瞬間移動を習得したのかもしれない。
お母さんは私のつま先から頭のてっぺんまで見渡したあとゆっくりと微笑んで、「おかえり」と言った。
私がコミュ障で人見知りだった頃は厳しかった母だけど、それは私のことを心配してのことだった。
本当はとても優しくて温かい、素敵な母親なのだ。
「おなかすいたー」
「お父さん、もうすぐ帰ってくるからちょっとだけ待ってて」
「ご飯何?」
「ご飯とハンバーグとサラダとスープ。あとデザートに……」
「あ、そこまで細かく答えんくてええから」
ハンバーグといえば、前に角名君にもらったおにぎり、謎のハンバーグ味だったなあ……。
部屋行ってくると言って、また一年半ぶりに自分の部屋に入ると、一人暮らし用に色々と持っていったから自分の部屋はまさに殺風景だった。
ぐるりと部屋を見渡した後、大阪に持っていかなかった、というよりは持っていくことを拒んだ棚の引き出しを一つ開ける。
その中には星哉と撮った写真だとか、誕生日やホワイトデーのお返しに貰った品々だとかが入っていた。
星哉を隠していた私の心みたいに、ずっと薄暗いところに眠っていた星哉との思い出。
懐かしいなぁ、なんて思いながら漁っていると、見覚えのある物が出てきた。
「……あれ」
お守りだった。これは、人見知りの私に星哉がくれたやつ……。
ハッとしてポケットからお婆さんから貰ったお守りを取り出して星哉がくれたものと見比べてみる。
「なんで」
息をするのを忘れたかのような掠れた声が出る。
なんで、星哉から貰ったお守りとお婆さんから貰ったお守りが同じなの?
108人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
昆布の神(プロフ) - ルナさん» 修正致しました。ご指摘ありがとうございました。 (2021年11月17日 15時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - あの、37話の星裁のお母さんが「まあ、神社みたいな感じかな」と言っている場面があるんですけど、”感じ„が“漢字„になっていましたよ! (2021年11月17日 0時) (レス) @page39 id: d2a92b36ce (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 虹四葉さん» コメありですー! 角名君いいよね……最高すぎる……。 (2021年3月31日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
虹四葉(プロフ) - もう神作よ…角名くんの言動が何もかも尊く見えるんだが…… (2021年3月31日 21時) (レス) id: 550a2fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 星猫さん» コメありです! 合作!? 是非ともお受けしたいです! お誘いありがとうございます! (2021年3月21日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2021年3月8日 23時