31.自己犠牲 ページ33
「人を好きな想いって止められないもんなんだよ、普通。もしAが告白せずにいて、好きな人が他の女子と付き合って、結局後悔することになるのは同じ」
「……でも、星哉が生きてるか死んでるかって、どっちがいいのかって言ったら、生きてる方に決まってる」
命は戻らない。
生きなきゃいけない。そう言っていた星哉の意志を壊してしまった。
悪いのは、私。
「俺さ、Aの話聞いてる限りだと、星哉さんとAって結構似た者同士だと思うんだよね」
「……は？」
似た者同士？ 私と星哉が？ 性格も、学力も、趣味も、全てが正反対なのに？
「……どこが、って思ったでしょ。俺が似てるって思ったのは自己犠牲の精神」
「……私、星哉が自己犠牲するような性格だなんて言ってない」
「まあそうだけど。でも、星哉さんは自分も怒られるのを承知でAと一緒に遠出した」
「あ」
「怒られたことをさ、星哉さんはAのせいだって言った？」
「……言ってない」
こんなんじゃ、まるで小学生と先生みたいだ。
正しい答えを導き出されようとされているのが、今の私。
「似てるよ、すごく。星哉さんもAも、自分にデメリットがあってもそれを他人に押し付けるようなことしないから。……だから、もう、わかるよね」
ゆっくり、小さい子をあやすように、私を確かめるように紡ぎ出されるその言葉。
常に雨が降っていた心が、ようやく止み始めたような気がした。
「……なんや、これじゃあ……私より角名君のほうが星哉のこと知ってるみたい……」
夕焼けの空に、少ない数だが星が姿を現し始めている。……星哉も、今、そこにいるのだろうか。
「自己犠牲……星哉は、死んだ理由を私に押し付けたりなんかしない……って、そういう……こと、ね」
そうだよ。そういう人間だ。星哉は、誰かを恨んだりするような、そんな人じゃない。
それでも、大切な幼馴染が死んだ事実に耐え切れなくて、いっそのこと自分のせいにしまいたくて。
「……なんだ、馬鹿みたい」
「うん、ほんと馬鹿」
辛辣な言葉が容赦なく突き刺さるが、泣いている私を見兼ねて角名君はもうそれ以上何も言わなかった。
この距離感が、何処かもどかしかった。
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昆布の神(プロフ) - ルナさん» 修正致しました。ご指摘ありがとうございました。 (2021年11月17日 15時) (
レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - あの、37話の星裁のお母さんが「まあ、神社みたいな感じかな」と言っている場面があるんですけど、”感じ„が“漢字„になっていましたよ！ (2021年11月17日 0時) (レス) @page39 id: d2a92b36ce (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 虹四葉さん» コメありですー！ 角名君いいよね……最高すぎる……。 (2021年3月31日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
虹四葉(プロフ) - もう神作よ…角名くんの言動が何もかも尊く見えるんだが…… (2021年3月31日 21時) (レス) id: 550a2fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 星猫さん» コメありです！ 合作！？ 是非ともお受けしたいです！ お誘いありがとうございます！ (2021年3月21日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2021年3月8日 23時
