君のせいだよ。【角名倫太郎】

28.星の音 ページ30

八月に入った頃の時。


七月下旬に行われた吹奏楽コンクールではダメ金さえも取れず、銀賞で府大会止まりとなり、そのまま先輩達が引退してしまった。


どんなに努力しても報われない。その不条理に私はどこかで気付いていた。


『全国金賞』なんて、たかが目標。夢のまた夢。
叩きつけられる現実。いい加減目を覚ませって言われてるみたいだった。



そんな中、星哉はある日ふらっとうちにやってきて、こう言った。



「ちょっと遠出しようぜ」


「親も一緒に？」


「……いや」



星哉は頭を振った。地毛の茶色い髪は日に照らされて星の王子さまの髪の毛みたいだった。



「二人だけで」


「……怒られちゃうよ」


「来年は受験だし。高校生はなんかもう大人って感じするし。バカできるの今年で最後だから、最後は二人で仲良く叱られようぜ」



あっけらかんと開き直った星哉に「ばーか」と返しつつ、内心は嬉しくて、結局無断で二人だけで遠出した。


そして見に行ったのが、満天の星空だったんだ。



「なあ、A。宇宙には幾億もの星があってさ。……知ってる？ 人が生まれる確率って幾億分の一だって。星の数だけ人が生まれる確率がある。
そう考えるとさ、あの星達が全部俺らの兄弟みたいじゃん？ だから、生きなきゃなあって思うよ。
俺、気楽だから死にたいとか思ったことないけど、数ある星の中から選ばれたんだから、生きないとって」


「……星の王子さまも、あの星のどれかにいるのかなぁ」


「いるよ」



星哉は迷いなくキッパリと答えた。



「鈴森って苗字、星みたいだよな」


「どこが」


「えー。なんかさ、星の王子さまの中になかったっけ？ 星を鈴に喩えた感じの比喩表現みたいな感じの文章」


「さあ、覚えとらんわ。最後に読んだの小学生やし。それに星の王子さまで一番記憶に残ってるの王子さまとバラの話やから」


「そこ好きだよなぁ」



また、はじける太陽のような笑顔。

ああ、好きだなぁって再度確認させられた。
私の幼馴染。私の、大好きな人。



そして、いつまでも星空を眺めた。




というわけにはいかず、電車の終電が来る前に私達は返った。

無断で夜にほっつき歩いていたのだから、そりゃあまあ当然のように怒られるわけで、私達は宣言通り仲良く叱られた。


でも、怒られているのに私と星哉が顔を見合わせて笑っていたのは内緒。

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