13.幾億の灯火 ページ15
A Side
行きたい場所、と言われても、パッと何かが思いつく訳でもない。
こっちに来てからはかなり無気力な性格になってしまい、兵庫に越してきてから一年間、遠出する機会も何も無かった。
(あの人だったら、どこ行くんやろ)
こんな時まであの人のことを考えてしまう私は、意地汚いというか何というか。失礼だなぁ。
───── 『宇宙には幾億もの星があってさ。……知ってる? 人が生まれる確率って幾億分の一だって』
───── 『星の数だけ人が生まれる確率がある。そう考えるとさ、あの星達が全部俺らの兄弟みたいじゃん?』
───── 『だから、生きなきゃなあって思うよ。俺、気楽だから死にたいとか思ったことないけど、数ある星の中から選ばれたんだから、生きないとって』
「──── プラネタリウム」
無意識に口に出していた。生で見たいけど、時間的に余裕は無いから。
「プラネタリウムがいい」
あの狭い空間で、幾億もの星が見れるわけではない。でも、このどこか穴が空いた心を塞げるのは、きっとそこしかなかった。
「……いいよ」
角名君がどこか寂しそうな顔をしているのは、何故だろうか。
*
「ほんと、ごめん。泊まらせてもらっちゃって。寝る場所とか狭かったやろ」
「いや……別にいいけどさ」
翌朝の土曜日、私も角名君も朝から部活があるから夫々部活の準備をする。ちなみに雨はもう止んでいた。
「A、ってさ……」
「おん」
角名君は五秒ほど黙ったあと、「やっぱりなんでもない」と言って目を逸らした。何故。
「行こっか」
「うん」
そのまま、土曜ということもあって平日よりは空いている電車に乗って、学校に行き、それぞれの活動場所に別れた。
体育館は一階だけど、音楽室は三階だ。
……といっても、今日は一日練だから、午前中に合奏したあと、課題点を午後にパート練や個人練するという感じなんだけれど。
「あー! Aせーんぱい! おはようございます!」
朝から元気な声。凛音ちゃんだ。
「おはよう」
「昨日雨すごかったですね! 私、風で傘が逆さになっちゃって」
「私は傘ぶっ壊れた」
「えええ、そんなに!? あー。そういえば、一回だけ風と雷雨が凄かった時ありましたよね」
唯一のオーボエの後輩である私と凛音ちゃんは仲良し。
同じダブルリードのファゴットは二人とも三年生だから、普通に先輩後輩の距離感を保っている。
108人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
昆布の神(プロフ) - ルナさん» 修正致しました。ご指摘ありがとうございました。 (2021年11月17日 15時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - あの、37話の星裁のお母さんが「まあ、神社みたいな感じかな」と言っている場面があるんですけど、”感じ„が“漢字„になっていましたよ! (2021年11月17日 0時) (レス) @page39 id: d2a92b36ce (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 虹四葉さん» コメありですー! 角名君いいよね……最高すぎる……。 (2021年3月31日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
虹四葉(プロフ) - もう神作よ…角名くんの言動が何もかも尊く見えるんだが…… (2021年3月31日 21時) (レス) id: 550a2fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 星猫さん» コメありです! 合作!? 是非ともお受けしたいです! お誘いありがとうございます! (2021年3月21日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2021年3月8日 23時