12.神様がいたとして ページ14
角名 Side
「人って、なんで名前を呼んで呼ばれるんやと思う?」
そう訊かれた時、真っ先に頭をよぎったのが、Aが常に一線を引いたような人付き合いをしているように見える理由。
今までは、自分にも他人にも興味が無さそうな、どこか気だるげな雰囲気が関係してると思っていた。
だけど思い返してみれば、Aがこの学校で名前呼びしているのは同じクラスの七草藍莉くらいだろう。
俺が知っている限りでは。
無意識なんだろうけど、もしかしたら彼女にとっての “友達” や “親しい人” っていう基準は、自分が相手を名前で呼んでいるか、また、相手が自分の名前を呼んでいるか。
要は、先程Aが訊いてきた “呼んで呼ばれる” 関係。これがAにとって、“友達” という名の線。それ以上でも以下でもない。
「……さあ、人の優しさじゃない?」
「人の名前を呼んで呼ぶことに何の優しさがあるん」
Aは少し顰め面をして、思い出すように視線で弧を描いた。
俺は、このAの何かを思い出している顔が嫌い。
まるで、知らない他の誰かを俺に重ねているように見えるから。
「……うちの実家、少し変わっててな。人の名前は、神様からの贈り物やって言い聞かされてきた。でも私、ひねくれてるから、そんなこと思ったことも信じようとしたこともない」
自分のことをひねくれていると自称した割に、次に飛び出してきた言葉は予想の斜め上をいく発言だった。
「一部の人以外は……少しでも親からの愛情を受けて育ってきた人達の名前は、周りの人がこんな人になって幸せになって欲しい、って願いを込めて付けたんやろ。それを神様からの贈り物なんて片付けたら、人の想いは全部無駄になる。もしも神様がいたとして、何がそんなに偉いん? ……気まぐれに運を分け与えて、人を不幸に突き落とすくせに」
「なに、実話?」
「……別に」
Aは口を噤んで黙りこくってしまった。
──────『気まぐれに運を分け与えて、人を不幸に突き落とすくせに』
それはAの周りの人のことか、それとも、A自身のことなのか。この時は全く何もわからなかった。
「ていうか結局、日曜どこ行きたいの?」
「そういえば話題がアホみたいに脱線してたわ」
さっきまで行くことを散々渋っていたけど、まあ一応来てくれるらしいAは首をひねって唸り始めた。
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昆布の神(プロフ) - ルナさん» 修正致しました。ご指摘ありがとうございました。 (2021年11月17日 15時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - あの、37話の星裁のお母さんが「まあ、神社みたいな感じかな」と言っている場面があるんですけど、”感じ„が“漢字„になっていましたよ! (2021年11月17日 0時) (レス) @page39 id: d2a92b36ce (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 虹四葉さん» コメありですー! 角名君いいよね……最高すぎる……。 (2021年3月31日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
虹四葉(プロフ) - もう神作よ…角名くんの言動が何もかも尊く見えるんだが…… (2021年3月31日 21時) (レス) id: 550a2fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 星猫さん» コメありです! 合作!? 是非ともお受けしたいです! お誘いありがとうございます! (2021年3月21日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2021年3月8日 23時